2024年度改定での診療報酬の大幅引き上げを求める理事会声明

 当会では、11月21日、2024年度改定での診療報酬の大幅引き上げを求める「理事会声明」を発表しました。


2024年度改定での診療報酬の大幅引き上げを求める声明

 11月20日、財政制度等審議会・財政制度分科会(財政審)では、「秋の建議」をまとめた。驚くべきことに、診療報酬改定では本体マイナス改定が適当とし、とりわけ、診療所の報酬単価は、初・再診料を中心に「5.5%程度」引き下げるべきとした。疲弊する医療現場の軽視も甚だしく、断固抗議する。

 改定を控える中、財務省がマイナス改定を主張することは慣例ではあるが、今回、財務局の機動的調査を根拠に、診療所の経常利益率は8.8%であり、全産業やサービス産業平均の経常利益率3.1%~3.4%と同程度にすべきとした。しかしながら、これは2020~2022事業年の医療法人の経営状況等を調査したものである。そもそも医療法人の事業年度は必ずしも4月~翌年3月ではないため、基礎データからして甚だ疑問である。しかも、コロナ関連の補助金やワクチン接種費用、診療報酬の特例措置なども反映されている。経常利益率が上昇したとすれば、むしろ、コロナ禍で国民の命と健康を守るため、感染の危機に晒されながらも診療所が地域医療に尽力してきた結果と言える。こうした評価は置き去りにして、恣意的なデータをもとに理不尽な主張を展開し、国民に誤解を与えるような提言は到底認められるものではない。

 「秋の建議」は、次期改定に向けた中医協の論議をけん制していることも伺える。初・再診料を中心に引き下げるというのは、外来管理加算や特定疾患療養管理料など、外来点数の要件見直しを示唆したものと言える。マイナ保険証利用率に着目した評価、リフィル処方箋による適正化効果の未達成を踏まえた処方箋料の時限的引き下げ、地域医療構想の実現に向けた診療報酬の適正化など、露骨な政策誘導を惹起していることも看過できない。

 診療報酬とは、国民医療の水準、すなわち医療の質と安全を規定するとともに、医療従事者の確保や待遇改善など医療機関の原資を保障するものである。長年の低医療費政策でマイナス改定が繰り返される中、感染防止にかかる恒常的経費の増加や物価高騰のもと、賃金の引き上げは不可能であり、国民医療の充実、向上のためには、プラス改定とする以外にはあり得ない。

 当会では、2024年度改定において基本診療料を中心に、診療報酬を大幅に引き上げるよう改めて訴えるものである。

2023年11月21日 山口県保険医協会理事会