円安は国策か!? バランス感覚を欠く政策がもたらしているもの
「( 元首相の)国葬」「(「北の国から」の)弾道ミサイル」「(企業ぐるみの)五輪を巡る汚職事件」等々、世間を騒がす話題に事欠かない今日この頃である。その中で一番身近な問題として、国民的に影響が大きい「円安」について取り上げさせていただく。
ちょうど2年前の2020年10月には、1ドル106円の水準であった。そして現在は1ドル145円となり、1・37倍の円安水準である。そのため10月には食料品をはじめ6500品目以上が値上げとなっており、当然のことながら家計を圧迫している。言うまでもなく日米の金利格差や国際的な政情不安が影響しており、その前提として世界的に生じているインフレやモノの値段の上昇がある。正に「何でも安く手に入る時代の終焉」かもしれない。
しかし、ここまでの急激な「円安」は、誰も容認できるものではないはずであるが、「円安」はある意味、国策であった。日銀総裁は、今の大規模な金融緩和を続ける方針を堅持したわけで、その理由として「日本の経済や物価の状況は欧米と大きく異なる」「具体的には、日本は新型コロナ拡大前のGDP水準まで回復していないから」「今、金利の上昇などの引き締めを敢行すると景気を冷え込ませる恐れがあるから」などとアピールしてきた。挙句の果てに、約24年ぶりとなる円買いドル売りを行った。過去最大2・8兆円の為替介入の実施である。24年前とは、銀行不良債権問題で日本が金融危機に陥ったあの時だ。バランス感覚の乏しい政策がここまで円の価値を下げてしまったと言える。そして、私たち医療機関においても一大事である。資源の乏しいわが国において円安の影響は、光熱費(電気・ガス・燃料)の値上がりという形で、経営に大きな打撃を与えつつある。今後も、光熱費の値上がりは必至の状況にある。本来であれば値上がり分は、サービスの受益者に価格転嫁すべきかもしれない。しかしながら、保険医療機関では値上がり分を患者から別途費用として徴収することは認められていない。医療機関の持出しである。別問題として、価格転嫁できない診療報酬の特性にも大きな問題が潜んでいるように思えるが、改めての機会に論じたい。
このように「円安」は、個々の家計の圧迫、そして企業経営、医療機関経営に大きな影響を及ぼしている。バランス感覚の乏しい政策と、誰の目を気にしているのか知らないが相変わらず後手後手に回る付け焼刃の方針、いったいどうするつもりなのだろうか。遅ればせながら、「物価高騰対策支援交付金」の話がチラホラ出ている。しかしこちらも、県や市により対応の違いがあるとのことであり、残念ながら、山口県では医療機関への支援はほとんど行われていないのが現状である。
(2022年11月)