【理事会声明】薬剤自己負担の拡大に反対する 

 当会では、11月21日、薬剤自己負担の拡大に反対する「理事会声明」を発表しました。


薬剤自己負担の拡大に反対する

 11月9日に開かれた社会保障審議会医療保険部会において、厚労省は後発医薬品のある先発品(長期収載品)を使用する場合に、3割分の窓口負担とは別に患者に負担させる仕組みを提案した。長期収載品の使用を患者の選択によるとして「選定療養」の対象とすることで、長期収載品と後発医薬品の薬価の差額分を患者負担(保険給付外)とするものであり、これまで何度も導入が見送られてきた「参照価格制」を念頭に置いたものとなっている。

 政府は「骨太方針」において医療保険財源の枠内で創薬費用の捻出を掲げており、今回の薬価差額分を新薬創出費用に充てることに「政策的合理性」があると主張している。しかし、服薬等による健康管理を要する患者から追加負担を徴収し、それによって新薬を開発していくことに何ら合理性はない。しかも、患者負担の拡大は後発医薬品の使用促進策ともいえるもので、後発医薬品の供給不足が続く中で、供給不安の恒常化をもたらしかねない。その結果、長期収載品を使わざるを得ない状況に医療機関を追い込むとともに、患者の選択によらない(患者が望まない)負担増を強いられる状況を引き起こす。

 そもそも投与する薬剤は患者の選択ではなく、医師の診断によって、患者の状態や治療上の効果を判断し選択されるもので、選定療養の対象とはなり得ない。医師の裁量(処方)によって長期収載品が処方されたにもかかわらず、後発医薬品との差額を徴収されることは、健康保険法で禁止された「混合診療」そのものである。今回の提案はその解禁とも言え、国民皆保険制度の崩壊につながるものとして大いに問題である。

 製薬企業の開発力、創薬力強化や医薬品の安定供給に向けての財源は、患者負担に頼るのではなく、政府の責任で補助金等による補填を考えるべきである。当会は、長期収載品の保険外し、混合診療の実質解禁につながる今回の提案に反対し、患者、国民とともに政府の負担増計画の中止を強く求めるものである。

2023年11月21日 第52期第4回理事会