【声明】「健康保険証を残せ」は国民の声 政府に真摯な対応を求める
8月4日、岸田首相は、2024年秋に健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと健康保険証を一本化(マイナ保険証に)する判断を先送りするとともに、資格確認書の有効期限の延長(最長5年)と、マイナ保険証非保有者全員に職権で交付することを表明した。この資格確認書の取扱いによって、トラブルが相次ぐマイナンバー制度への国民の不安を払拭するとしているが、資格確認書は従来の健康保険証と何ら変わりはなく、マイナ保険証非保有者への交付は、実質的にマイナ保険証と従来の健康保険証を併存させることに等しい。そうであれば、資格確認書という「新たな証」の交付のために無駄な費用と時間をかけず、健康保険証を残せばよいだけの話である。
また、健康保険証廃止の方針を維持することに対して、現在行われているトラブルにかかる総点検の結果を見極める必要があるとして、廃止延長に含みを持たせている。しかし、仮にトラブルが解消したとしても健康保険証は廃止されてよいものではない。健康保険証は憲法25条に基づく国民皆保険制度の根幹となるものであり、交付は健康保険法において国、保険者の義務とされる。その健康保険証を廃止してマイナ保険証とすることは、任意取得のマイナンバーカードを義務化することにほかならず、様々な理由で取得しない人、取得できない人にとっては、健康保険証の廃止によって保険診療から排除され、国民皆保険のもとで誰もが平等に医療を受ける権利を奪われてしまう。資格確認書が職権で交付され、有効期限が延長されるとしても、そうした根本的問題は解決されない。
この間の世論調査でも明らかなように、多くの国民は健康保険証の廃止に反対をしている。「国民の声を聞く」というのであれば、「健康保険証を残せ」という国民の声を真摯に受け止めるべきである。私たちは、今回の岸田首相の政府方針説明に抗議するとともに、国民皆保険制度を守る上でも現行の健康保険証を存続させることを改めて強く求めるものである。
2023年8月7日 山口県保険医協会会長 阿 部 政 則