高額療養費制度の自己負担限度額引き上げ方針の撤回を求める(会長声明)
高額療養費制度の見直し案が12月24日の大臣折衝で提示されたことを受け、当会は12月25日に下記の会長声明を発出しました。
高額療養費制度の自己負担限度額引き上げ方針の撤回を求める
12月24日、財務相と厚生労働相の大臣折衝により、社会保障制度改革の1つとして高額療養費制度の見直し案が提示された。多数回該当の据え置きや年間上限の新設などが示された一方、月額の自己負担限度額は大幅に引き上げられており、早くも当事者から懸念の声が表明されている。
昨年、政府が負担増計画を勝手に推し進めた結果、国民的運動により「高額療養費制度の見直しは凍結」とされた。その批判をかわすべく、今回は「高額療養費制度の見直しの基本的考え方」を踏まえるとしたが、所得区分の細分化や自己負担限度額を引き上げる方向は前回同様の提案であり、既定路線であったと言わざるを得ない。上げ幅を抑えたと言っても38%増となる所得区分(年収650~700万円)もあり、70歳未満の現役世代への影響は深刻である。また、高齢者においても70歳以上の外来特例が見直され、年収200~370万円の所得区分では55%の大幅な負担増となっている。
制度の見直しにあたっては、「世代間、世代内で負担の公平化」「年齢ではなく能力に応じた負担」といった全世代型社会保障制度の構築が根本にあり、「制度の持続可能性」を名目としている。換言すれば、重篤な疾患の治療や療養を要する患者の自己負担を増やして財源を確保するというもので、まさに患者の命と健康を引き換えにしていると言える。物価高騰で国民生活が厳しさを増し、経済的理由による受診抑制や治療中断も起きている中、公的医療保険のセーフティネットである高額療養費制度を見直すことは到底認められるものではなく、当会では自己負担限度額引き上げ方針の撤回を求める。
現在進められている社会保障制度改革は、高額療養費制度の見直しだけに止まらない。OTC類似薬など薬剤自己負担の見直しや高齢者を中心とした医療、介護の自己負担増など、誰もがお金の心配なく安心して医療、介護が受けられる社会保障理念とは程遠い内容となっている。負担増ばかりが先行する要因は、社会保障費という枠組みだけの財源論に終始していることにあり、そこから脱却しなければならない。当会では、「税の在り方・使い方」を抜本的に見直し、社会保障充実に必要な財源を充てる構造に転換するよう、患者・国民とともに訴え、取り組んでいくものである。
2025年12月25日 山口県保険医協会 会長 阿部 政則

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