高額療養費の自己負担限度額引き上げではなく患者負担の軽減を(会長声明)
当会では、12月26日、下記の内容で会長声明を発出しました。
高額療養費の自己負担限度額引き上げではなく患者負担の軽減を
12月25日、財務相と厚生労働相の大臣折衝により、来年度の予算編成に向けた方針が示された。この中において明記された高額療養費の自己負担限度額の引き上げは到底認められないものであり、指摘しておかなければならない。
自己負担限度額の見直しは、2025年8月から2027年8月にかけて、3段階で引き上げていくものとなっている。25年8月からは2.7%~15%の引き上げ幅で、26年度からは年収区分を細分化して段階的に引き上げられる。結果、現行の平均的な年収区分(年収370~770万円)の中でも、上げ幅は10%を優に超えるケースも出る。また、70歳以上の高齢者(年収370万円まで)を対象とした「外来特例」についても年収区分を細分化、月額上限8,000円~28,000円に見直し、年間上限も増額となるものである。
今回の引き上げにあたり、「すべての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る」ことを理由として、保険料3700億円程度、公費1600億円程度(国1100億円、地方500億円)の削減が見込まれている。しかしながら、重篤な疾患の治療や療養を要する患者の自己負担増に付け替えて財源を確保するというものであり、まったく正当性はない。まさしく全世代型社会保障が掲げる「世代間、世代内で負担の公平化」「年齢ではなく能力に応じた負担」を実行したものであり、保険料負担の軽減を口実にした国の財政責任の後退である。
異常な物価高騰で国民生活は厳しさを増し、実質賃金(年金)が低下する中で、経済的理由による受診抑制、治療中断も起きている。今回の見直しにより、治療が長期にわたる患者の生活を圧迫することは明らかで、患者の命と健康が脅かされてしまう。したがって、我々は、制度の見直しと称した患者負担増には断固反対する。
今後も高齢者を中心として医療、介護の自己負担増の検討が進められる予定であるが、いま国に求められているのは、国民が安心して医療を受けられるよう患者負担の軽減を行うことである。税・社会保険料の構造を抜本的に見直し、社会保障に必要な国費を投入する、すなわち、医療費抑制策の転換を図ることを強く訴えるものである。
2024年12月26日 山口県保険医協会 会長 阿部 政則