疲弊する医療現場を軽視した財政審「建議」に抗議する(会長声明)

財政制度等審議会(財政審)が12月2日に「令和8年度予算の編成等に関する建議」を発表したことを受け、当会では12月3日に下記の会長声明を発出しました。

疲弊する医療現場を軽視した財政審「建議」に抗議する

 12月2日、財政制度等審議会(財政審)は「令和8年度予算の編成等に関する建議」を発表した。11月5日、11月11日に公表した内容と何ら変化はなく、「診療所を狙い撃ち」とした印象操作を繰り返し、医療現場の危機的状況を全く理解しようとしない財政審の傲慢な姿勢が鮮明となった。

 曰く「診療所の利益率や利益剰余金は高水準」、「診療所は病院に比べて経常利益率が高い」、「多くの診療所に経営余力が存在する」。よって、診療所については診療報酬を適正化(=削減)する方向で検討すべきとしたのである。財政審は様々な比較論法を用いるが、各国で医療提供体制が異なるし、病院と診療所では費用構造等が違う。この間示された「医療法人経営情報データベース」や「医療経済実態調査」の結果を見ても、診療所には経営的余力はなく、経営危機に陥っていることは明白である。

 財政審はさらに「かかりつけ医機能」の強化を力説し、「かかりつけ医機能報告制度」と連動させた診療報酬の評価を求めてきた。同制度における1号機能をすら有さない医療機関には厳しく対応すべきとして、「初診料・再診料」の減算まで主張した。また、加算点数の評価の在り方も様々指摘し、「かかりつけ医機能」に向けた政策誘導を提案しているが、実地医家が望む基本診療料の底上げには何ら触れていない。そもそも地域の開業医は「かかりつけ医機能」の役割をすでに果たしているもので、制度化することで開業医の差別化を図る手法は、到底認められるものではない。財政審が診療報酬の改定項目にまで踏み込む権限はなく、大いに問題である。

 診療報酬は、国民医療の水準、医療機関の原資を保障するものであり、政策誘導の手段ではない。その充実こそが医療の質と安全、医療経営の安定を確保することは言うまでもない。今回の財政審「建議」は、疲弊する医療現場を軽視した提言でしかなく断固抗議する。同時に政府には、このような「建議」に振り回されることなく、医療現場の切実なる声をもとに、2026年度改定において基本診療料を中心に診療報酬を10%以上引き上げるよう改めて求めるものである。

2025年12月3日  山口県保険医協会 会長 阿部 政則