国民のための経済運営を(会報5月号「主張」)

 円安が続いています。2024年4月末にはついに1ドル160円まできました。大幅な円安です。わが国にとっては大ダメージです。さすがに財務省も約8兆円の為替介入をしました。現在は通貨価値が下落して、コストインプレッションでの物価上昇となっています。この事態は、日本銀行が国債を大量に購入して市中に資金をばら撒く、というアベノミクスの弊害です。ベースマネーをまき散らせば、マネーストック(マネーサプライ)が増えるとの考えですが、残念ながら教科書通りにいきませんでした。1980年代、円高に苦しんだ日本企業は中国をはじめ海外に進出し、日本国内の産業の空洞化がすすみました。国自体が高齢化して、新規投資が以前より減ったのも理由の一つです。
 2012年、第二次安倍政権が発足すると日本銀行に金融緩和を要求しました。当時の白川総裁らは、これまでの立場を変えて金融緩和に賛成しました。2013年に就任した黒田総裁、岩田副総裁は2年以内に2%の物価上昇と自信満々に発言しましたが、うまくいかないため、2016年2月、辻褄合わせにマイナス金利政策に足を踏み入れました。金融緩和は米国、中国、EUも行っており、他国へ対抗するために仕方がなかったとも言えますが、2016年のマイナス金利導入は悪手だったように思います。日本銀行のバランスシートを見ると、資産の中で買いまくった600兆円もの長期国債が大きく占めています。負債は当座預金がほぼ同等あります。1998年度と比較してバランスシートが9倍に膨張した日本銀行は、どう出口戦略を描くのでしょうか。2023年12月の日銀企画局のつくったYoutube動画の中に、金融引き締め時(バランスシート縮小時)に、当座預金の利子支払が増加するので、日銀の支払いが増える。購入時より国債金利が上昇したので、動画撮影時で10兆円の含み損を抱えていると発言しています。出口戦略時に日銀の債務超過の可能性、円の信認低下につながる可能性があります。現在、植田総裁が就任していますが、これから引き受ける日銀総裁は、国民の批判を浴びることになります。誰がやってもつらい立場になるでしょう。
 小泉政権が、イラク戦争時に為替介入という名でアメリカ国債を大量に購入して、結果として30兆円以上もの軍事資金を提供しました。1990年前半の湾岸戦争は130億ドルをアメリカに支援、イラク戦争時、軍事費のためにブッシュ政権(息子)は大量の米国債を発行しました。当然ドル安になり、円高になります。日本は為替防衛ということで、毎日1兆円購入、30日連続購入という離れ業を行いました。買った米ドルに利子がつけばということで、アメリカの軍事国債とも言える米国債を大量購入しました。特に小泉政権以降、国民の許可もなく特別会計制度を用いてアメリカ国債を大量に買い続けています。為替介入をして、日本円が落ちても米ドルの価値が上昇するので、150兆円ものドルを持った外国為替の特別会計は、天才の一手と思い感心しました。しかし、米ドルが現在のように基軸通貨であるいうのが前提条件です。リーマンショック以降、アメリカは大量の米ドル国債を発行しています。現在35兆ドルのアメリカ国債、約5000兆円ものお金で、このペースはすさまじいです。ここまで発行すると米ドルの覇権が大きく揺らいでいます。軍事費用のために、日本がさらにアメリカ国債を買わされて、最後に日本国民が馬鹿をみることはないようにして欲しいものです。
 本年4月、岸田総理は、米国上下両院合同会議で、今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない。もしインド太平洋地域にアメリカがいなければ、厳しい現実に直面していただろう、などと演説して大喝采を受けていました。日本が財政的、軍事的に助太刀するぞと受け取られたと思います。日本は日本国民のために、国家運営・経済運営を行わなくてはなりません。(2024年会報5月号「主張」)