危機打開は基本診療料を中心とした診療報酬の10%引き上げでこそ(会報12月号「主張」)
本稿執筆中の12月16日現在、2026年度診療報酬改定率はプラス改定との報道がある。昨今の物価高で急激に費用が増え、実質マイナス改定による減収で、医療機関の倒産件数は過去最大、もはや経営努力では限界に達しているのだから当然である。ただ期待を込めても、これまで何かと条件付き、さらには「2階に上げて梯子を外す」政策により、辛酸を嘗めてきた我々実地医家にとっては懐疑的な側面も残る。連立政権に座った日本維新の会は、すでに「病院と診療所の経営状況の違いを踏まえた入院と外来のメリハリ付け」などを政府に求めており、診療所(開業医)にとっては厳しいものになる可能性も否定はできない。
当会が求めているのは、「基本診療料を中心に診療報酬を10%以上引き上げること」である。この要求は、協会.保団連が繰り返し求めてきたものだ。診療報酬は20年間で累計10%以上引き下げられているからである。「そんなの無理でしょう」などと聞き入れてもらえない時期もあったが、ここに至って、日本医師会、病院協会なども「診療報酬の10%引き上げ」を主張して医療界全体の要求となった。ぶれずに、論拠を持って、波状的な要請活動を行ってきた結果であり、まさに運動の成果であろう。特筆すべき、「基本診療料を中心に」という要求である。プラス改定とした上で、さらにこの点を勝ち取ることが極めて重要である。許しがたいのだが、現状の診療報酬は、政府による政策誘導の手段と化している。しかも「療養の給付」とは何ら関係のないものを点数化するのである。例えば、医療DX推進体制整備加算やベースアップ評価料がその典型である。基本診療料を引き上げない代わりに加算を算定させる、国の施策に流れるよう仕向ける、加算を算定できない医療機関は経営悪化になっても見て見ぬふり、という実に狡猾な手法である。ちなみに次回改定での注意すべき内容は、財政審が企てている「かかりつけ医機能報告制度」と診療報酬とのリンクである。詳しくは別稿に譲るが、医療機関の差別化、フリーアクセスの制限、受診時定額負担の導入など危険な方向性が読み取れ、決して認めてはならない。医院経営が危機に陥るのはこのような政策手段がまかり通っているからであり、結果、地域から医療機関が無くなり、地域に人が住めなくなる。困るのは患者、国民なのだ。
「診療報酬10%引き上げ」には、医療費ベースで約3.6兆円必要と推計される。費用の規模から、これもまた「そんなの無理でしょう」というバイアスがかかると思われる。しかし、マイナポイント事業の関連予算は約2兆円。防衛費にいたっては、2027年度までにGDP比2%にまで引き上げるという政府目標のもと約9兆円にものぼっている。結局、「財源の在り方と使い方」次第である。現役世代の社会保険料負担を減らすと称して、高額療養費の負担上限額の見直し、OTC類似薬の保険外しなど論理矛盾の提起が行われているが、医療費という枠の中での議論では、財源を取り合う構図となり、世代間の分断を生むだけである。また、もう1つのバイアスとして、「診療報酬を引き上げれば窓口負担が増える」というものがある。協会.保団連が診療報酬の引き上げを求める際、必ず「窓口負担の軽減」も要求として掲げるのはこの点にある。当会理事会では「『軽減』では分かりにくいため、きっぱり『ゼロ』を訴えてみるのはどうか」という提起も出されたところである。この訴えも「財源の在り方と使い方」次第で、実現可能性への道が論じられるものとなる(「責任ある財源論」については、会報610号~ 614 号連載「社会保障『改革』からの出口戦略」を参照願いたい)。
さて、地域医療存続の危機打開はどうなるか。そのことが次期改定により左右されることは言うまでもない。我々は、ぶれずに「基本診療料を中心に」診療報酬の10%引き上げを求めていかなければならない。

