健康保険証廃止法案の採決に抗議する声明

【声明】

国民皆保険制度を揺るがす健康保険証廃止法案の採決に抗議します

 5月31日、健康保険証を廃止しマイナンバーカードと一本化することを含んだ「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律案(マイナンバー法等一部「改正」法案)」が、参議院特別委員会において可決されました。

 私たちはこの間、健康保険証の廃止による無保険者の発生をはじめ、医療や介護現場における混乱や「誤登録」「誤交付」などの問題事例を指摘し、それに伴う多くの国民の不安の声を明らかにしてきました。とりわけ、機微性の高い個人の健康情報の誤登録は、医療事故や情報の外部流出につながるものであり、重大問題としてその全容解明が必要です。しかし、そうした声に応えることなく、また、健康保険証を廃止しなければならない理由も不明確なまま採決に至ったことは、結論ありきの見切り発車的対応と言わざるを得ません。

 健康保険法では、保険者が被保険者に健康保険証を発行・交付することを義務付けており、全ての国民の手元に健康保険証が届けられることが国民皆保険制度の大前提です。にもかかわらず、現行の健康保険証を廃止し、取得が任意となっているマイナンバーカードに一本化することは、「発行・交付義務」から「申請主義」への転換であり、「無保険者」を生み出しかねない状況を政策的に作り出すことによって、国民皆保険制度の根幹が大きく揺らぎます。

 国民のいのちや健康にかかわる重要法案にもかかわらず、拙速に採決したことに私たちは断固抗議します。この間明らかとなった、マイナンバーカードの健康保険証利用をめぐる一連のトラブルなど様々な問題となっている事態の収拾をはじめ国民への対応を急ぎ行うとともに、現行の健康保険証を存続させるよう改めて強く求めるものです。

2023年6月1日   山口県保険医協会会長  阿 部 政 則