健保法等関連省令の変更に対する意見(パブコメ)

 政府は5月24日、健康保険法などの省令から、健康保険証にかかる諸規定を削除するにあたりパブリックコメントを募集しました。これに対し当会からは、6月19日、以下の内容で意見を述べました。


行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令案(仮称)に対する意見

 健康保険証をマイナンバーカードと一体化(マイナ保険証に)することで、国民皆保険の下ですべての国民が平等に保有している健康保険証を廃止するとされた。2023年6月の法改定によるものだが、それに伴う今回の省令案は、療養の給付を受ける際に行う資格確認の方法において、電子資格確認以外に厚生労働省令で定める「被保険者証を提出する方法」を削除するなど、被保険者証にかかる規定の削除、整理を行うとしている。被保険者がマイナ保険証を持たない(持てない)場合に、保険者に対して「資格確認書」の交付を求めることができる、として改定された施行規則も前提にしているが、この「資格確認書」自体が現行の健康保険証と何ら変わるものではなく、健康保険証を廃止する根拠が明確でないことが指摘されている。私たちは一貫して現行の健康保険証の存続を求めてきており、この度の省令案には反対である。

医療機関においてはオンラインによる資格確認が義務化され、そのもとで強引なシステム導入が進められた。しかし、実際に運用が始まって以降、相次ぐトラブルによって現場は大きく混乱した。政府としても事態を重く見て、「新型コロナ対策並み」の臨戦対策と豪語して「総点検作業」といった対応を行ったが、現時点でもトラブルは続いている。トラブル解消は健康保険証によるしかなく、そのことは厚生労働省も認めているのであって、「トラブルゼロ」にはならないもとで健康保険証を廃止する方針は矛盾をきたしている。

私たちは、医療機関窓口において患者さんを中心に「健康保険証廃止」方針に対する意見を聞いてきた。3月以降1000名近くの意見を集約したが、9割以上が「廃止に反対」の意思を示している。マイナンバーカード取得は任意であるため、取得しない人が存在するし、高齢者をはじめ取得することが困難な人も多数存在している。また、取得できたとしても5年ごとの更新が必要であるなど手続きや使用にあたっての取り扱いの問題が指摘されている。トラブル続きであること、持ち歩くことで紛失のリスクが高まること、あらゆる情報が紐づけられようとしているもとでそれらの情報が漏洩してしまう危険性など、寄せられているのは不安や不満の声ばかりである。政府はマイナンバーカード(マイナ保険証)のメリットを強調するが、現状ではメリットよりデメリットを強く感じているのである。「マイナ保険証はあってもいいが、健康保険証をなくす必要はないのではないか」「なぜ廃止なのか、なぜ併用ではいけないのか」との声が多く寄せられており、まさにこれが国民の率直な意見だと言える。

そのことはマイナ保険証の利用状況にも表れている。政府は5月から7月をマイナ保険証利用率向上の「集中期間」と定め、多額の公費を投入して様々な取り組みを進めているが、国民の間での利用率はさほど向上していない。推進する立場の公務員の間でも同様である。その理由は前述のような状況の中で、政府が思うほどマイナンバーカード、マイナンバー制度への国民の信頼が得られていないからだ。現時点でも健康保険証によるオンライン資格確認は行われている。このまま12月に健康保険証を廃止するのではなく、国民の声に耳を傾けた政策を遂行すべきである。そのもとでマイナ保険証に国民がメリットを感じれば、健康保険証を廃止しなくても、国民はそちらを選択するはずである。