令和8年度税制改正大綱の見直しを求める(会長声明)

12月19日に自民党、日本維新の会による税制調査会が令和8年度税制改正大綱を決定したことを受け、当会では12月24日に下記の会長声明を発出しました。

令和8年度税制改正大綱の見直しを求める

 自民党、維新の会による税制調査会は、12 月 19 日に令和8年度税制改正大綱を決定し、政府に提出した。

 今回の改正では、昨年に引き続いて『年収の壁』問題が注目され、国民民主党の希望に沿った内容となっているものの、その中身は、令和7年度改正分を含めても、月額に換算して2~3千円程度の減税(一部中間所得層は9千円程度)にしかならない。約3年半も掛けて協議したとは思えない内容であるとともに、根本問題である社会保険料の“壁”、地方税の“壁”には一切触れられていない。さらに、この間の国政選挙で、自民党を除く全ての政党が公約に掲げた消費税減税に、ひと言も触れられていないことは問題であり、早急に議論の俎上に上げるよう求める。また、未だ復興が終わらない東北地震の震災支援費として徴収している復興特別所得税の一部について、人の命を奪う軍事産業への支援に転換する改正も行われており、国民の健康と命を守る医師・歯科医師の団体として、断固として反対する。

 令和8年度税制改正大綱の中身については、大企業、超富裕層への一部増税が盛り込まれているものの、同時に減税制度の新設・拡充も導入されており、臨時国会で話題が逸らされた『企業団体献金の禁止』が実現しない限り、補正予算の内容を含め、大企業、関連団体へのバラマキから脱却できないことが明らかになった。一方で、国民への減税政策は、どれも小粒の改定内容となっており、現在の国民生活を直視できていないと言わざるを得ない。さらに、病床転換支援事業費の国保税化など、一部増税に繋がる内容も含まれており、今回の税制改正の内容は到底容認できるものではない。特に、税務手続きのデジタル化の名目で、書面による確定申告書の提出者への青色申告特別控除を大幅に減額する内容については、大きな混乱が予想され、強引な医療DX化の推進による混乱も収まらない中で、地方・過疎地域等で地域医療を支えている高齢医師・歯科医師には、引退を決定付ける強引な改正になりかねない。確定申告の申告手段によって、税控除が大きく異なることは、税の公平性の観点、申告納税制度の意義自体を揺るがしかねない問題であり、早急に見直すことを求めるものである。

 当会は、今回の税制改正大綱の大幅な見直しを求め、国民が安心して医療を受けられる社会に戻すよう、患者、国民とともに、来年の通常国会に向けて取り組んでいくものである。

2025年12月24日  山口県保険医協会 会長 阿部 政則