【声明】健康保険証の廃止方針を撤回する英断を求める

不安は払しょくされていない! 健康保険証の廃止方針を撤回する英断を求める

 岸田首相は、12月12日、「予定通り現行の健康保険証の発行を来秋に終了する」と発表した。マイナ保険証のトラブルをめぐり開催されてきた政府のマイナンバー情報総点検本部の最終とりまとめを受けたものである。紐づけ誤りが1.6万件にも達する中で、マイナ保険証に一本化する方針を変えないばかりか、個人情報、ましてやセンシティブな医療情報を軽々に扱う様相は、法治国家として許されるものではない。

 医療現場でのトラブルは継続して発生している。保団連が10月1日以降のマイナ保険証トラブル調査を行った結果(第一次集計)、トラブル事例が「あった」との回答は6割近くあり、名前や住所の黒丸表記、資格情報無効、カードリーダーでのエラーなど様々で、そのたびに現場は対応に追われている。だからこそ、健康保険証を残すべき、延期すべきとの回答は9.5割にものぼり、これが現場の切実な願いである。

 政府は、トラブルが発生するたびに、ツギハギだらけの対応を示してきた。それによる被保険者資格確認のための「証明書」は5通りにも及び、このまま健康保険証が廃止されれば現場は大混乱に陥る。これで不安を払しょくするための措置を取ったと居直られても、誰も納得できるものではない。ゆえに、マイナ保険証の利用率がわずか4.49%と低迷し続けているのである。

 現状、利便性の向上や質の高い医療といったマイナ保険証の導入理由が成立していないことは、政府自身も理解しているはずである。政府には、このまま突き進むのではなく、健康保険証の廃止方針を撤回する英断を求めたい。私たちは、それまで「健康保険証を残す」運動をさらに強めていく決意である。

2023年12月13日 山口県保険医協会 会長 阿部政則