「マイナ保険証」と「健康保険証」の併用が現実的な解決策~12月2日の「健康保険証」廃止の期限を迎えて~(会長声明)

当会では、12月2日、下記の内容で会長声明を発出しました。

「マイナ保険証」と「健康保険証」の併用が現実的な解決策
~12月2日の「健康保険証」廃止の期限を迎えて~

 「健康保険証」が1枚あれば、いつでも、どこでも、誰でもが安心して医療を受けられる。いわば国民皆保険制度の象徴であった「健康保険証」が12月2日、廃止の期限を迎えた。当会では、この間、医療現場の実態調査を6回にわたり行い、問題点を明らかにして、政府に改善を求めてきた。しかし、政府は、後期高齢者全員への「資格確認書」交付、来年3月まで「健康保険証」を使えるようにするなどのツギハギだらけの対応を繰り返してきた。

 厚労省が「マイナ保険証を基本とする仕組みへの移行」を謳い、取り繕ったところで、マイナ保険証による資格確認をめぐって現場では相変わらずトラブルが続いている。当会が本年10月に行った実態調査では、カードリーダーによる不具合(顔認証エラー、●表示、接続不良など)はもちろんのこと、操作に手間がかかり受付が混乱、保険切替のタイムラグで正確な情報が確認できないなど、従来のトラブルと何ら変化がない。マイナ保険証のメリットばかりを強調した強引な推進策、未完成なシステムのまま体制の移行を推し進めた上、その運用を現場に丸投げしたことが様々な問題の原因である。システム構築にあたっては、問題が起きないための対策を万全に整えておくものであり、政府はその対応を怠った。本当に良いシステムであれば、自然とそれに移行するものだが、厚労省のこれまでの対応ではトラブルが何ら解決されないため、マイナ保険証の利用率は37.14%(2025年10月)にとどまっているのである。

私たちはマイナ保険証に反対しているのではない。使いたい人は使えば良く、使えない(使いたくない)人もいるので「健康保険証」を廃止することに反対してきた。マイナ保険証は被保険者の申請により初めて手元に届くが、そもそも国民皆保険制度である以上、国・保険者が責任をもってすべての被保険者に申請なしで「健康保険証」を交付してきた原則を覆すことは許されない。すべての国民の受療権を守り、患者さんが安心して受診できるためのもっとも現実的な解決策は、「健康保険証」を復活させ、「マイナ保険証」と併用した運用とすることであると改めて訴えるものである。

2025年12月2日  山口県保険医協会 会長 阿部 政則