―イスラエルのガザ地区進行に寄せて― 社会保障の充実でいのちと平和を守る政治を(会報6月号「主張」)

 2023年10月7日に始まった、イスラム組織「ハマス」によるイスラエルへの越境攻撃を「口実」にした、イスラエルによるガザ地区への軍事攻撃は、今現在も深刻さの一途をたどっています。そして、11月4日には、ハマスの司令部の存在を口実に、イスラエル軍はガザ地区最大の病院であるシファ病院への軍事侵攻を図りました。650人の患者さんとともに2500人の医療従事者・避難民がいるにもかかわらずの侵攻でした。多くの新生児が亡くなったことは皆さんの記憶にあるのではないでしょうか。
 シファ病院は、約700床を有するガザ地区最大の歴史ある病院です。人々の命を守る病院への直接攻撃と軍事侵攻は、国際人権法上も許されず、占領者イスラエルの非人道性を如実に示しています。その後の様々な検討の結果、イスラエルが主張した「シファ病院はハマスの拠点」なる主張は証拠不十分との結論が出されています(ワシントンポスト)。
 イスラエルの「侵略的建国」以来75年、そしてガザ地区では16年以上の完全封鎖が強制されてきたのは明確な歴史的事実です。ハマスのテロ行為は許されるものではありませんが、イスラエルの占領下にあるパレスチナ側からの「抵抗運動」という側面もあり、ハマスとイスラエルとの戦争というふに単純にとらえることはできない状況だといえます。また、今回のハマスのテロが起こる前に、イスラエルの株が大量に売られており、売り抜けして大儲けした人たちがいたということが、日経新聞で報道されました。イスラエル当局はハマスのテロを事前に察知していたのではとの見方もあるようです。
 本年5月20日、国際刑事裁判所は戦争犯罪容疑で、イスラエルのネタニヤフ首相とハマスの指導者に逮捕状を請求したと発表しました。この動きにネタニヤフ首相は激しく抗議しました。アメリカのバイデン大統領もこれに同調し、アメリカ議会も同様の動きを見せています。全力で医療を行っている病院に攻撃命令を出したとすれば、完全な戦争犯罪です。また、戦禍の中にある市民にとって最後の命綱といえる医療へのアクセスを奪う行為です。いかなる理由・立場にあったとしても、こうした行為を擁護するような見方は、医師・歯科医師の団体として、認めるわけにはいきません。
 一方、日本政府において、田中角栄内閣の時代はイスラエルとアラブの関係は等距離でした。しかし、小泉内閣の際、イラクやインド洋へ自衛隊を派遣。その後、第二次安倍内閣期の2015年、安保法制を改正し「集団的自衛権」を認め、武器輸出3原則を投げ捨て、防衛装備移転3原則へと改悪したのと同時に、イスラエルとの親密な関係に突き進みました。そして、現在の岸田内閣では、日本で作製した弾薬やミサイルなどの殺傷能力のある武器の輸出を可能にしました。こうしたことは、すべてアメリカの二重基準による外交政策の後に従っている「対米従属」外交の当然の結果です。
 日本にいる我々がパレスチナの被災者を直接支援することは困難ですが、日本政府の外交政策を注視し、平和的解決に向けた世論づくりが重要となっています。平和と社会保障の充実は不可分です。防衛費拡大の一方で、社会保障の削減が進められていますが、こうした政治の在り方を正し、いのちと健康を守り国際平和を重視する政治へと立ち返らせるよう、社会保障を守る運動に全力で取り組んでいきたいと思います。(2024年会報6月号「主張」)