マイナ保険証利用率低迷の責任を医療機関に転嫁する社会保障審議会見解に抗議(会長声明)
当会では、9月5日、下記の内容で会長声明を発出しました。
【声明】
療養担当規則違反となる根拠なし マイナ保険証利用率低迷の責任を医療機関に転嫁するのは容認できない
2024年8月30日社会保障審議会・医療保険部会において、マイナ保険証の利用実績が著しく低い医療機関に対しては、地方厚生局が個別に事情を確認する等の働きかけを行う方針が提示された。さらには、医療機関が患者のマイナ保険証を使う機会を奪っている場合は、療養担当規則違反となる恐れがあるとの見解を示すなど、個別指導を仄めかしてマイナ保険証の利用促進を行う厚労省の対応は看過できるものではなく、提示内容の撤回を求めるものである。
政府は本年5~7月にかけ、マイナ保険証利用促進の取組集中月間を設けて多額の補助金を投入するなど、なりふり構わない施策で推し進めたが、結果として、7月の利用率は11.13%であり、5月から僅か3.4%の伸びにとどまった。このことは、マイナ保険証を利用する必要性がないことを如実に表したもので、患者、国民から信頼を得られていない証左でもある。厚生労働大臣が記者会見で述べたように、「国民が不安を感じないようにする」のであれば、現行の健康保険証を残すことが一番の解決策である。
そもそもマイナ保険証の利用は、患者の自由な意思によるものであり、利用率低迷の責任を医療機関に転嫁するような指摘は論外である。また、患者の提示する被保険者証で資格確認ができることは療養担当規則から明らかである。にもかかわらず、利用実績が低い医療機関を殊更に強調し、法令違反などと何の根拠もない理屈を展開するのは圧政を敷く強権的姿勢であると言わざるを得ない。
健康保険証廃止の省令改正に対するパブリックコメントは53,000件を超え、ほとんどが現行の健康保険証の存続を求めるものであった。現時点でマイナ保険証の一本化は非現実的であることは疑いなく、12月2日に現行の健康保険証を廃止すれば現場は間違いなく混乱する。政府にはいったん立ち止まり冷静な対応と健康保険証を残す政治的英断を改めて求めるものである。
2024年9月5日 山口県保険医協会 会長 阿部 政則