第30回代議員会・第52回定期総会で「決議」を採択

決  議

 今年4月からオンライン資格確認義務化がスタートした。通常国会でのマイナンバー法等関連法案の可決・成立により、マイナンバーカードを健康保険証と一体化(マイナ保険証に)することで2024年秋には従来の健康保険証は廃止するとしている。マイナ保険証をめぐってはトラブルが相次いでいるが、政府は医療DX推進の基盤事業として位置づけ、強制的に進めている。4年にも及ぶ新型コロナウイルス感染症対策や止まることを知らない物価、エネルギー価格の高騰のもと、多くの医療機関は疲弊している。そのもとで「義務」として強引に押し付けられたデジタル化によって、閉院・廃業に追い込まれる医療機関も後を絶たない。

 一方、閣議決定された「骨太の方針2023」は、防衛費や「異次元の少子化対策」への財源捻出に向けて社会保障費を中心とした歳出削減をこれまで以上に強めていく意向で、全世代型社会保障の実現に向けて給付・負担の新たな将来見通しを示すとした。とりわけ、高齢者と現役世代との対立をあおる中で全世代にわたっての負担増が狙われているのが特徴である。デジタル化の強行がそうであるように、社会保障における「給付と負担の見直し」は、給付の抑制と負担増を当然のこととして強引に進められ、国民生活に直結する社会保障制度は「財政健全化」の名のもとに大きく切り崩されようとしている。

 このような国民生活や医療現場の実情に思いを寄せることのできない冷たい政策に国民的理解は得られるものではない。私たちは、国民の声、会員からの意見を聞きながら、医師、歯科医師の生活と権利、そして国民医療を守る活動を進めてきた。厳しい情勢のもとではあるが、引き続き国民の基本的権利である社会保障の擁護、そして充実、発展のため、以下の通り決議する。

1.国民皆保険制度の根幹である健康保険証を残すこと。

2.「全世代型社会保障の実現」と称した給付抑制、負担増はやめること。

3.地域医療を守るために、診療報酬、介護報酬は抜本的に引き上げること。

4.歯科技工問題を突破口に歯科医療費の総枠拡大を実現すること。

5.いかなる新興感染症にも対応できるよう医療提供体制を整備すること。

6.医療現場を無視した医療DX推進に伴う弊害に対しては断固とした対応を行うこと。

7.物価高騰への対応など医療機関経営への支援、消費税損税解消の取組みを継続すること。

8.地域に必要な病床を守り、社会保障にかかる県独自の制度を充実・向上させること。

9.会員の経営と権利を守り国民医療の向上に寄与するため協会組織の発展に力を尽くすこと。

10.憲法25条を遵守し、権利としての社会保障制度の実現をめざすこと。

2023年8月10日 山口県保険医協会第52回定期総会