私たちからの訴え

このままオンライン資格確認を「義務化」するのか 一度立ち止まって国会で問題点の精査を

 年末が間近に迫る中、オンライン資格確認(「オン資」)システム導入の入り口であるカードリーダー登録が進み始めている。「オン資」の体制整備の「義務化」は、省令(療養担当規則)によって規定された。そのため厚労省は、体制整備を行わない場合に療養担当規則違反として保険医療機関等の指定取り消し要件にもなりうることをほのめかし、医療機関に「脅し」をかけた。そのことが、登録に向けた医療機関の動向に大きく影響していることは否定できない。県医師会においても「療養担当規則に規定された」としてカードリーダーの早期登録をアピールするなどの動きがあったが、「義務化」に悩む医療現場の状況からすれば、もう少し会員の声を汲み取った対応が必要だったように思う。
 当会が実施した会員アンケート結果(会報578号)で特徴的なのは、すでに「オン資」システムの導入に着手している医療機関の6割以上が「オン資」の必要性を感じないと回答していることだ。必要だとは思っていないにもかかわらず「とりあえずカードリーダー等を申し込んだ」ということになるわけで、その背景に療養担当規則改定(「義務化」規定)があると考えるのはそのためだ。コロナ禍での医療従事者の疲弊、さらには物価高による経費増大の中での「オン資」の強制は、現場を無視した政策遂行だ。カードリーダー登録後のベンダーへの対応は個々の医療機関に丸投げで、システム導入に当たって知識の乏しい医療機関はベンダーの言いなりにならざるを得ない。適正価格も不明なまま契約に至らざるを得ないのが現状だと聞くが、「義務化」という割には政府の支援は非常に乏しい。これに加えてアンケートでは、「セキュリティ問題」「情報漏洩」「窓口事務負担の増加」「ランニングコスト」など制度に対する懸念が多数寄せられおり、すでに運用している医療機関の3割がデータ処理や機器関連のトラブルを経験している。対応できない医療機関を保険診療から遠ざけてしまい、閉院・廃業の声も後を絶たない。こうした現場から噴き出す問題に対し、政府として丁寧に対応しているとはとても言えない。
 このような状況の下で、来年4月からの「義務化」は無理スジであるが、そこに政府は「保険証廃止」を重ねてきた。「マイナンバーカード(マイナカード)を保険証として使用し、2024年秋以降は保険証を廃止する」とのデジタル大臣の突然の表明は多くの国民を驚かせた。そもそもマイナカードの取得は法的に任意となっている。利便性と危険性を利益衡量し、取得する、しないは個人の責任による判断となるからだ。にもかかわらず、国民皆保険制度のもとで必要不可欠な保険証をマイナカードに替えるということは、国民にマイナカードの取得を義務づけるものである。法的根拠もないまま政府方針の押し付けは許されるものではない。まさに、医療機関に療養担当規則違反を迫る手法と軌を一にする。任意となっているマイナカードである以上、取得できない、取得しない人たちは当然いるわけで、そうした人を医療から遠ざけ、受療権を侵害するものとして看過できない。
 「オン資」導入もマイナカードの取得も否定するものではない。希望するものが導入し、取得すればよく、「義務化」は誰も望んでいないはずだ。国民に義務を押し付けるならば、法的手続きも含め、国民が納得できる議論や説明が不可欠である。療養担当規則に盛り込んでまで「義務化」を強いる手法は、国による医療の統制につながるものであり、非常に問題が大きい。ここは一度立ち止まってしっかりとこの問題を精査すべき
であり、そのためにも国会での審議、また「オン資」義務化について再検討するとした中央社会保険協議会での議論を注目したい。

(2022年12月)