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2020年4月診療報酬改定「これまでの議論の整理」にパブリックコメントを提出

「これまでの議論の整理」に対するパブリックコメント

2020/01/22 山口県保険医協会

1)今回の診療報酬改定に対する全体的な意見
(内容)今次診療報酬の改定率について
(意見)
 今回も実質マイナス改定となった。2002年以降、累計10%に及ぶマイナス改定により疲弊した医療現場を改善させるには、全体でのプラス改定は不可欠であり、到底認められるものではない。「働き方改革」と称して、診療報酬上での特例的な対応や地域医療介護総合確保基金を上積みし、「別枠」で財源を確保したことを強調しているが、実際にはこれらの財源を診療報酬財源として加えても、全体でのプラス改定とはならない。また厚労省は、今回、「全体」の改定率は算出していない、とした上で、薬価等の引き下げ分を本体に振り替えることはせず、「診療報酬」と「薬価等」を完全に切り分けた挙句に、「診療報酬はプラスにした」との見解を示したことは、実質マイナス改定である事実を覆い隠したと言わざるを得ない。
 診療報酬を引き下げれば、医療経営の安定及び医療の質と安全に大きな影響を与えることとなる。すなわち、医療機関の原資が減るために、医療従事者の待遇にも影響が出る。政府が勧奨する賃金の引き上げは不可能であるばかりか、「働き方改革」にも逆行する。同時に、国民医療の水準を低下させるために、その最大の犠牲者は、患者、国民となる。国はこの重大な事態を認識し、全体でのプラス改定となるよう必要な財源を投入すべきである。

2)「現時点での骨子」の項目に係る意見
項目番号:Ⅱ-1 かかりつけ機能の評価、Ⅱ-2 患者にとって必要な情報提供や相談支援の推進
(内容)かかりつけ機能の評価について
(意見)
 地域包括診療加算や小児かかりつけ診療料の要件緩和、重複投薬の解消に対する新たな評価、機能強化加算の掲示等の要件見直しなど、かかりつけ機能を推進、普及するための項目が列記されている。前回改定で、機能強化加算の届出医療機関が「かかりつけ医機能を有する医療機関」として診療報酬上に定義付けられたが、当該加算を届け出ていなければ、「かかりつけ医」では無いとして差別化が進むことになると、再三にわたり指摘してきた。緩やかなゲートキーパーを求める社会保障制度改革の根底にある政策的意図は、「登録医制」「診療報酬の包括払い」「患者のフリーアクセス制限」であり、機能強化加算など、かかりつけ機能を趣旨とした加算点数の廃止を改めて求めたい。地域の開業医はすでに「かかりつけ医」としての役割を果たしており、診療報酬上で評価するのであれば、全ての医療機関が算定できるよう、基本診療料の引き上げによって行うべきである。

(内容)明細書発行に係る要件の見直しについて
(意見)
 改定の度に、明細書発行に係る要件が見直されてきているが、明細書発行の義務化をやめるべきである。患者が求めているものは、明細書による医療費の内容ではなく、自らの病気の内容や医療行為の内容(検査結果や治療効果など)で、医療機関では日常診療において患者と対話し、提供しているものである。医療費の内容や仕組みについて理解を広げることは、「療養の給付」を行う医療機関からの明細書発行によるのではなく、制度を組み立てる国並びに保険者が説明すべきものである。

項目番号:Ⅱ-6 アウトカムにも着目した評価の推進
(内容)アウトカム評価について
(意見)
 回復期リハビリテーション病棟入院料のほか、ニコチン依存症管理料、精神科デイ・ケア、摂食機能療法の経口摂取回復促進加算、療養病棟入院基本料の褥瘡対策加算など、診療報酬上での「アウトカム評価」が次々に拡大している現状は容認できない。とりわけ、褥瘡対策加算については、褥瘡ケアの向上に繋がらず現場の労働強化を招くなど、問題が大きい。成果主義としての報酬体系は、「療養の給付」の原則から逸脱するものであり、廃止を求める。
 データ提出加算に関しては、回復期リハビリテーション病棟5・6と療養病棟について、許可病床数が200床未満の病院にも対象を拡大する提案が中医協において出されているが、多くの中小病院では、データ提出加算の要件を整えることは困難を極める。特に地方においては、職員確保に苦慮している現状もある上、電子カルテを導入していないなどシステムそのものが準備できていない場合には対応できない。DPCデータの提出は保険診療や審査支払業務とは無関係であるにもかかわらず、当該加算を届け出ていなければ入院基本料等を算定できないとすること自体が問題であり、入院基本料等に関するデータ提出加算の届出要件を廃止することを求める。

項目番号:Ⅱ-7-5 小児医療、周産期医療、救急医療の充実
(内容)妊婦加算の取扱いについて
(意見)
 2019年1月からの妊婦加算の凍結は、中医協での必要な調査、検証を行うことなく、政治的圧力によって、いきなり厚労省から中医協へ凍結の諮問が出された。そのために、明確な結論もないまま、妊婦の診療体制の一層の確保を目的に新設された「産科・産婦人科特例」までもが凍結され現状に至っているが、このプロセスは非常に問題がある。妊婦加算の取扱いをめぐっては、「妊産婦に対する保健・医療体制の在り方に関する検討会」での議論を踏まえ、今次改定で対応されることとなったが、「療養の給付」の範囲や在り方を決める診療報酬の取扱いについては、中医協において十分に審議の上、行われるべきである。

項目番号:Ⅱ-11 医療におけるICTの利活用
(内容)オンライン診療料について
(意見)
 医療は、患者との直接の対面診療が原則である。遠隔診療は、情報通信機器等を用いて直接の対面診療を補完するものとの位置付けで、「慢性期疾患等で離島やへき地の患者」を対象に導入されたものである。現在、オンライン診療料をめぐって、実施方法や対象疾患に係る要件等の見直しが議論されているが、国民医療の質と量を担保する診療報酬上でその評価を行うのであれば、医学的エビデンスに基づき、慎重に扱うべきである。規制改革推進会議によるオンライン診療の拡大方針と、ビジネスチャンスと見る営利企業が一体となって推し進められているために、当初の想定外である都市部で拡大している現状は見過ごせない。営利目的で拡大していけば、医療行為そのものを産業化することにつながり、ひいては、医療の否定につながることを認識すべきである。

項目番号:Ⅲ-1 医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
(内容)入院医療の評価について
(意見)
 今次改定の重点課題とされた「働き方改革」の下、医師、看護師など医療従事者の負担軽減を図る要件の見直しが多々見受けられるが、人件費あるいは施設設備費等が担保されるためには、加算点数ではなく、入院基本料を大幅に引き上げることで対応すべきである。そのためにも、前回改定で細分化された入院料を簡素化することや、回復期リハビリテーション病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料における実績要件の拡大を推し進めないことが必要である。また、前回改定で新設された夜間看護体制特定日減算については、「年間6日以内かつ連続して2カ月以内」といった要件があるために、看護師不足も含め、夜間対応や救急外来の実施に困難が伴う地方の病院からは、「減算されてまで対応しなければならないのなら、無理をして救急患者の対応は行えない」とする意見もある。したがって、夜間看護体制特定日減算については廃止するか、少なくとも要件の緩和を図る必要がある。そもそも夜間救急への対応については、診療報酬ではなく医療提供体制の中で検証すべきである。
 中医協での議論の中で、「地域医療構想に寄り添う診療報酬」という意見が見受けられるが、機能分化のために病床削減を進める地域医療構想を実現することを目的に、診療報酬によって誘導することは問題である。とりわけ、データ提出加算の届出要件について、療養病棟を持つ中小病院にまで広げることは、介護医療院への移行も示唆していると言え、認められない。

項目番号:Ⅲ-2 外来医療の機能分化
(内容)紹介状なしでの大病院受診時の定額負担等について
(意見)
 紹介状なしで病院を受診した場合の定額負担及び低紹介率初診料等について、200床以上の地域医療支援病院への拡大が示唆されているが、ほとんどの地域医療支援病院が対象となるため、地域医療に大きな影響を与えることが危惧される。一方、全世代型社会保障検討会議の中間報告において、当該定額負担の制度については、200床以上の一般病院にまで拡大し、「患者の負担額を増額し、増額分について公的医療保険の負担を軽減する」ことが示されている。中小病院は地域におけるプライマリケアの役割を果たす医療機関であり、紹介による受診が前提となればフリーアクセスが制限され、地域医療は混乱することとなる。また、低紹介率初診料等の基準の見直しとの連動によって、「増額分の公費負担軽減」を図る意図が見て取れる。このことは、従来の選定療養の枠を越えて踏み込むものであり、今回の見直しが、外来機能分化やかかりつけ医の普及を推し進める政府方針と合致している以上、「かかりつけ医以外を受診した場合の受診時定額負担」と将来的に連動すると言え、認められない。

項目番号:Ⅲ-3 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
(内容)複数の医療機関が連携して行う在宅医療などについて
(意見)
 在宅患者訪問診療料(Ⅰ)2について、6ヵ月を越えた訪問診療の実施にあたって情報共有を前提とした要件の見直しが示されているが、何よりも、依頼した医療機関や依頼先の医療機関での点数並びに算定回数の格差を是正すべきである。同時に、現場に混乱をもたらしている同一建物居住者や単一建物診療患者の取扱いなど一物多価の規定の即時撤廃や、在宅医療の推進を阻む在宅療養支援診療所等における看取りや緊急往診の実績要件の廃止を求める。
 また、地域で医療機関が連携して在宅医療の体制を整えるにあたって、地方では、支援診(強化型含む)の届出を行えるほどのマンパワーがないことから、強化型支援診、強化型以外の支援診に限らず、地域で医療機関同士が連携している場合は、次の要件を評価するよう求めたい。
① 在宅ターミナルケア加算の要件である2回以上の往診又は訪問診療の回数に、連携医療機関による訪問回数をカウントできるようにすること。
② 主治医が看取りについて患者又は家族への説明と同意を行ったが、結果的に連携医療機関が看取った場合、連携医療機関で看取り加算を算定できるようにすること。

(内容)小規模多機能型居宅介護等の宿泊サービス利用中の訪問診療の要件について
(意見)
 中医協での議論では、「退院直後」に限り、いわゆる「30日ルール」の要件から除外し、訪問診療料を算定できるようにするとしているが、当該患者によるサービス利用前30日以内に患家を訪問、診察した上でサービス利用開始後30日に限って訪問診療料等を算定できるとする取扱いそのものが不合理であり、廃止すべきである。現実的には、長期間にわたって当該宿泊サービスを利用せざるを得ない患者が多く存在するが、その最大の原因は、医療・介護の提供体制の整備等が進まないためであり、国の責任によるものである。
 また、要介護者等に対する診療報酬の算定制限の根本的な問題は、「医療保険と介護保険の給付調整」(「給付調整」)にある。とりわけ、特別養護老人ホーム(特養)等施設入所者に対する医療は、「給付調整」による不合理の極みである。入所者の高齢化や重症化が進む中、特養の配置医師は、入院患者や重症の在宅患者と同様、常に症状観察と診療を行っているにもかかわらず、通常の外来患者や在宅患者であれば算定できる保険診療が入所者には認められない。したがって、「給付調整」の廃止を求めたい。少なくとも、特養等施設入所者に対する医療の算定制限を止め、医療行為を正しく評価するべきである。

(内容)緊急時の訪問薬剤管理指導について
(意見)
 緊急時の訪問薬剤管理指導について、原疾患以外の疾患に対応するため、訪問計画によらず、医師の求めに応じて臨時で訪問薬剤管理指導を行った場合の新たな評価が検討されており、中医協の資料では、具体例として、「便秘や発熱などの肺気腫(原疾患)とは関係のない疾患に対応する臨時投薬」とある。しかしながら、そもそも原疾患であろうと、原疾患以外の疾患であろうと、急変等の判断を行うことは薬剤師ではできないため、まず医師が緊急に患家を訪問した上で、診断(具体例では、便秘や発熱)するものである。したがって、提案されているような新たな評価は現実的でなく、むしろ当該点数については廃止を含めて検討すべきである。
 また、在宅患者訪問薬剤管理指導料は、「在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なもの」に対して、医師の診療に基づき計画的な医学管理を継続して行うことが前提だが、ともすれば、「医師の訪問診療が無くても、通院が困難な状態であれば利用できる」という誤った解釈による、「医師の求めがあれば、通院が困難なものでなくても算定可」とする動きにつながっているのではないか。今回の提案の根底には、医師と薬剤師により解釈が異なっている現状があることから派生しているため、薬剤師による訪問薬剤管理指導については、単なる「医師の求め」ではなく、あくまで「担当医の診断に基づいて」行うことを原則とすべきである。

項目番号:Ⅳ-1 後発医薬品やバイオ後続品の使用促進
(内容)後発医薬品使用体制加算について
(意見)
 後発医薬品の使用について、診療所での使用割合が低いことを理由に、後発医薬品使用体制加算等の要件及び評価の見直しが示されているが、当該加算の施設基準のハードルが高いこと、後発医薬品の在庫を抱えることが困難など、様々な要因があることを考慮すべきである。患者個々の医療行為に対する評価ではなく、使用体制にかかる加算として診療報酬上で評価すること自体が問題ではあるが、中医協での議論の中で支払側から出されている「ペナルティ」を設けることを想定した見直しであれば、言語道断である。

項目番号:Ⅳ-7 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
(内容)入院患者の他医療機関受診に係る減算の取扱いについて
(意見)
 ポジトロン断層撮影を受けるために、入院中の患者が他医療機関を受診する場合の減算の取扱いの緩和等が示されたが、こうした減算規定そのものが入院患者の他医での専門的な医療を受ける権利を阻害することにつながる。したがって、入院患者の他医療機関受診にかかる減算規定はもとより、他医療機関における投薬、注射等の算定制限は廃止すべきである。同時に、医療機関間の「合議による精算」の規定も、健康保険法の趣旨からして大いに問題である。明確な法的根拠もなく拡大していけば、現物給付の原則、ひいては保険診療の崩壊にもつながるゆゆしき事態であり、「合議精算」規定は廃止するよう求める。

以上