私たちからの訴え

「黄金の3年間」の始まり 今後の政府の動きに注視を

 7月10日、第26回参議院選挙が行われた。選挙終盤の7月8日には、安倍元首相が銃撃され死去するという痛ましい事件が発生するなど、波乱の展開の中で実施された選挙だが、総務省によると選挙区の投票率は52・05%との結果であった。50%を下回った前回に比べれば向上したものの、過去4番目の低さであり、依然として低い水準にある。そのもとで政権与党である自民党が議席を伸ばし、単独で改選過半数となる63議席を獲得する結果となった。自民党の勝因は、岸田首相に国民の支持が集まったためとは言い難く、野党の弱さと、重要政策の先送りが主な理由と考える。
 参議院選は「政権選択」選挙ではないと言われるが、この結果を受け政府は、「民意を得た」として、私たちが危惧する政策をより強硬に進めてくることが予想される。
 まず、問題となるのは、75歳以上の医療費窓口負担の「2割化」(以下、「2割化」)である。すでに今年10月からの実施が決められているが、長引くコロナ禍、円安に伴う物価高騰により、国民生活はただでさえ苦しくなっている中、「2割化」が実施されれば、高齢者の受診抑制につながることは避けられない。さらに、「全世代型社会保障の実現」を目指す政府は、「骨太の方針」において「給付と負担の公平化」を掲げており、患者負担を含めた保険給付範囲の見直しや能力に応じた保険料負担を求めることなど、さらなる患者負担増計画を盛り込んでいる。これらは高齢者だけでなく、あらゆる世代への負担増を推進するもので、「2割化」の延期・中止を求めるとともに、「全世代型社会保障」の名の下で進められる負担増に歯止めをかけるため、患者・国民と一体となった運動をさらに推進する必要がある。
 防衛費をめぐる問題も医療と無関係ではない。今回の選挙では、自民党と同様に、防衛費の増額を強調する日本維新の会が議席を伸ばしたこともあり、防衛費の増加をめぐる議論はさらに加速することが予想される。政府はウクライナ情勢を背景に、現在約5・4兆円を投じている防衛費を、今後5年間で2倍に増額することを表明しており、それには新たに約5兆円もの財源が必要になる。その財源については、防衛費の増額を主張する各党とも明確にしていないものの、これまで社会保障削減路線を取り続けてきた政府が、財源捻出のためにこの路線をさらに強めてくることは想像に難くない。防衛費の強化を口実とした社会保障費のさらなる削減は許さないとして、医療界一致のもと強く牽制していく必要がある。
 また、医療・介護分野でのDX推進の動きも注視が必要で、特にデータヘルス改革の基盤事業となるオンライン資格確認は最重要課題となっており、「マイナンバーカードの保険証利用」は当面する問題として重要である。遅々として進まないマイナンバーカードの普及を、医療機関を利用して強引に進めた上で、医療デジタル化で収集した様々な医療情報・個人情報を、「ビジネス」として利活用していくことが狙われている。政府は骨太方針の中で2023年4月からのオンライン資格確認システム導入を義務化し、2024年度中に「保険証を原則廃止」するとして、具体的な期限を示して盛り込んできている以上、これに向けて強引に進めてくる恐れがある。
 これら、今後予想される政府の動きに対し、患者・医療従事者が一体となって取り組む保険医協会の運動はますます重要なものとなる。来る8月11日に行われる第29代議員会・第51回定期総会では、医療を取り巻く情勢と課題を改めて確認するとともに、来期からの保険医協会の運動方針について議論を深める場としたい。会員各位にはぜひともご参加頂きたい。

(2022年8月)