私たちからの訴え

院内感染予防対策の周知を~患者に分かりやすく訴えよう~

 先日のこと。「歯科からクラスターが出ていないのは素晴らしいね」と内科の医師に褒められた。「歯科は肝炎やエイズなど常に感染を意識して対応してきていますからね」と返した。「でもそれに対しての評価が診療報酬に反映されているかといえば、そうでないですけどね」と補足した。
 新型コロナウイルスへの感染が最も危ないのは歯科診療だという報道があった。身近では、「歯科は一番危ないといわれたので、学校歯科検診を延期して欲しいのですが」と養護教諭からの連絡があった。先日の米国Visual apitalist での新型コロナウイルスに感染するリスクが高い職業ランキングでは1位歯科衛生士、3位歯科助手、4位一般歯科医師と歯科医療関係者が上位を占めた。また、「感染症を熟知しているはずの病院でも結構院内感染しているではないか。歯科で感染が起きないはずがない」とも言われたことがある。しかし冒頭に述べたとおり、歯科では治療によるクラスター感染は起きていないのである。
 その理由として、医療従事者には新型コロナウイルス感染蔓延に関わらず院内感染予防対策が求められており、患者の唾液から逃れることのできない歯科医療関係者は、院内感染予防対策に対して、特に徹底して取り組んできたからではないかと思われる。
 しかし、歯科医療機関の感染予防への取り組みや実践を患者側が知っているとは限らない。歯科医療機関だけでなくすべての医療機関での取り組みも十分には認知されていないのではないだろうか。そのため、「医療機関へ行くとコロナに感染するかもしれない。特に歯科は危ないらしい」との自己判断での受診抑制もあるのではないだろうか。せっかくの機会である。保険医協会から、実際に行われている感染予防対策を患者へ啓蒙するべきだ。感染予防対策はしっかり整っているというだけではだめだと思う。普段からどのような取り組みをしているか、新型コロナに対してはどのように特別な対策をしているかなどを具体的に、患者に分かりやすく訴えたらよいと思う。歯科受診によって口腔内を健康に保つことこそ、ウイルス感染の予防に繋がるのであり、そうしたことについて院内に提示できるようなものや患者に配付できるものなどいろいろな方法が考えられる。患者への啓蒙で、医療に対する信頼も高まるはずである。
 医療現場では診療控えが起きたが街中はというと、マスクなどしたことのなかった人たちがマスクを買い求めた結果、診療用のマスクの値段は高騰した。高騰だけならまだしも出荷制限や物自体の不足で手に入らない医療関係者も出てきた。手などきちんと洗ったことのなかった人たちが石鹸や消毒用アルコール、消毒剤を求めた。その結果はマスクと同じだ。フェイスシールドや防護用のメガネ防護服、綿、ガーゼなどもである。最近では含嗽剤。大阪協会と大阪歯科協会は、府知事の不用意な発言に対してすぐに声明を発表したが、未だに含嗽剤(イソジン以外のものも含めて)の出荷制限は続いているようである。
 新型コロナウイルスにより街も医療界も混乱に陥っている。行政に対する働きかけはもちろんのこと、国民に対する啓蒙活動も含め、新型コロナウイルス感染防止に向けて、様々な面で協会の活動が求められている。

(2020年9月)