私たちからの訴え

金パラ「逆ザヤ」解消のため市場価格を遅滞なく反映させる仕組みを

 現在、保険診療に携わる歯科医師の最大の関心事は金パラ「逆ザヤ」問題といっても過言ではないだろう。医科の先生方に「逆ザヤ」問題を改めて説明すると、いわゆる「銀歯」に使われる保険材料の金銀パラジウム合金は歯科医療機関が業者から購入しているのだが、金やパラジウムは相場の値動きが激しく、医療機関は「時価」で購入している。購入価格が告示価格を上回ってしまうと、その差額(「逆ザヤ」)は適正な価格に改定されるまでは医療機関が被ることになり経営上の問題になっている。
 保険点数表に反映される告示価格は、5%以上の価格変動があると改定されることになっているが、4月と10月の年2回しか改定が実施されず、相場の乱高に対応できないことが問題視されてきた。これに対し保団連では、「逆ザヤ」解消を求める運動を展開、「金パラ逆ザヤシミュレーター」を活用した「逆ザヤ」額の全国調査とその結果をもとに国会議員への要請、署名活動などを実施した。それらの運動の成果もあり、2020年度に「随時改定Ⅱ」が導入され7月、1月も加えた年4回改定が実施される仕組みが導入された。
 本年7月に初めて行われた随時改定Ⅱによって、金パラ告示価格は引き上げられた。異常な値上がりを見せていた金パラの市場価格も、コロナショックによる製造業のパラジウム需要の落ち込みなどもあり落ち着きを見せていたことから、概ねそれに見合うものとして「逆ザヤ」もある程度解消したと安堵した。しかし、それも束の間、10月には再度金パラ市場価格が上昇し、再び「逆ザヤ」状態となってしまった。そのような中で行われた10月の随時改定Ⅰでは、落ち着きを見せていた頃の実勢価格を反映した改定となったため、逆に保険点数が引き下げられ、さらなる「逆ザヤ」拡大となっている。その昔、カブトシローという天皇賞や有馬記念をも優勝した名馬がいた。これがムラの多い稀代のクセ馬で、人気になると凡走し人気が下がると好走して穴を開けることから「新聞の読める馬」とも呼ばれた。金属相場も同じように我々の顔色を見ているのか、調査期間の間はおとなしく、期間が終わると歯科医師をあざ笑うかのように高騰する気がしてならない。保団連では随時改定の問題点として①随時改定Ⅱでは±15%以上の価格変動がないと実施されないことになっており、随時改定Ⅰの±5%という基準と根拠のない差が設定されていること、②合金の市場価格でなく素材の市場価格を参照にしていること(業者の合金作成コストや利潤が反映されていない)、③価格変動の参照時期と価格改定の実施時期のタイムラグ(この間に大幅な価格変動が有り得る)、などを指摘している。その他にも根拠となる市場調査の内容(規模や対象となる業者、期間など)や公示価格の算出式などの公開を従前から保団連などで情報公開請求を行っているが、厚労省は一切応じていない。価格決定のプロセスもブラックボックスなのである。だから依然として疑心暗鬼のままで厚労省の発表など信用できないというのが数多くの歯科医師の本音だろう。
 金パラで逆ザヤが出るようでは当然、歯科技工士にもしわ寄せが行くのは想像に難くない。厚労省、中医協には医療機関に赤字を被ることがないようなシステムの再構築(市場価格を遅滞なく反映する仕組みなど)と公示価格決定のプロセスの透明化を望むものである。

(2020年12月)