私たちからの訴え

負担増を食い止め、全ての患者さんに保険で良い医療を

 新型コロナ感染症の第7波が予想を上回る感染拡大を示し、最大の感染者数を報告されている現状(8月19日現在)を鑑みると、感染症における様々な制限解除が、自国の経済や国民生活・健康に、如何に大きく影響を及ぼしているかが明らかになったように思われます。今夏の日本列島は、もはや「例年の如く」と言えるほど各地で災害が発生しており、ロシアのウクライナ軍事侵攻や新型コロナ禍の影響もあって、国民生活は更なる困窮を強いられています。我が国は、リーマンショックからの立ち直りが十分にできないまま、消費税増税や社会保障費削減等が行われ、国民生活は余裕の無い窮屈なものとなってしまいました。どういう訳かその頃より、自国を褒め称えるメディアが多くなりました。「美しい国日本」「世界が訪れたくなる国日本」「外国人に優しい国日本」等々、気恥ずかしくなるような言葉で自画自賛するCMやプログラムを頻繁に目にするようになったのです。自国の恥ずかしい部分・悪い部分をマスクしてしまったため、気付かぬ内にひ弱になってしまっていたことが分からなくなったのではないでしょうか? 国民生活は全く改善されないどころか、見せかけの好景気に惑わされ、一部の大企業やIT関連企業だけに国策の恩恵が行き渡っているようにさえ思えます。いわゆる「骨太の方針」は、実は有事に弱いアベノミクスによって弱体化した我が国を、じわじわと真綿で首を絞めていく政策に思えてなりません。
 医療の現場に目を向けると、新型コロナ禍以前に、小泉政権から連綿と続いている医療費抑制策で大きな打撃を受けており、もはや使命感とボランティア精神だけではやっていけなくなっています。そこに追い打ちをかけるように新型コロナ感染症のパンデミックが出現したため、長年積み重なっていた医療体制の脆弱性が露呈し、大きな混乱を招くことになりました。人的パワーの不足、日常診療の制限、高度な感染対策への対応等、本来の診療が大きく削がれてしまう状態に追いやられてしまったのです。そして受診抑制や診療休止が起きてしまい、患者の病状悪化や治療の遅れを招き、未だ十分に回復できないまま3年が過ぎようとしています。その現状を顧みることなく、今次診療報酬改定ではマイナス0・94%と更なる医療費抑制が打ち出され、疲弊し余力を削がれた医療機関の中には、診療を諦めなければならない所も出てくる始末です。
 保険医協会の理念は「全ての患者さんに保険で良い医療を提供する」ことです。良い医療というのは患者一人一人にベストな医療を提供することであり、それは精神的・身体的に、また経済的にもベストであるということです。高齢者医療費2割化、マイナンバーカードの資格確認義務化等が打ち出され、施行されようとしています。オンライン資格確認義務化となれば、設備を整えていないことを理由に拒否した場合、ペナルティが発生し診療ができなくなる可能性が考えられます。何故政府はセキュリティの堅牢性を確保せず、十分な説明もしないまま、医療DXを理由にインフラ整備も十分でない改定を拙速に推し進めようとするのでしょうか? 今回の診療報酬改定においても、細かい所に至るまで様々な不整合や露骨な政策誘導が図られています。こうした政策がこのまますんなりと推し進められてゆくのであれば、今後の医療は益々先細り、一般国民が望んだ医療とはかけ離れた存在になってゆくのは目に見えています。今回、第51回定期総会で採択された決議に示すように、「患者負担増を食い止めること」を第一義に、保険で良い医療を全ての患者さんに提供できるよう、日々活動して行かなければならないと考えます。そのためにも会員の皆様に常々お願いしています会員署名に、できうる限りのご協力をお願い致します。

(2022年9月)