私たちからの訴え

歯科診療報酬の「異常」の是正と総枠拡大を強く求めよう

 8月4日に開かれた中医協では、2022年4月の歯科診療報酬改定に向けた議論が始まっており、次期改定の具体的な論点が示された。コロナ禍でその重要性がさらに大きくなっている「院内感染防止対策」もその一つであり、現在、臨時的な取り扱いとして設けられているコロナ対応に対する初・再診料への加算(新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策として「特に必要な感染症対策」を講じた上で診療等を実施した場合の加算)の継続についても議論が行われている。
 歯科の院内感染対策については、コロナ以前からの課題であり、2018年改定では、初・再診料の施設基準(歯初診)とされ、届出がない場合には初・再診料が大きく減算(2020年4月改定時点で初診料21点、再診料9点の減算)される制度となった。院内感染対策にかかる費用が初・再診料での包括評価とされているが、2007年の中医協で示された「平成18 年度医療安全に関するコスト調査業務」によると、歯科における院内感染防止対策に必要なコストは268円(外来患者1人1回につき)であり、あまりにも低い評価といえる。歯科診療全般における技術料が長年にわたり据え置かれてきた状況の下で、基本診療料に減算規定を持ち込まれては、感染対策の費用を捻出できない歯科医療機関にとって、その対策をさらに困難にする。これでは、すべての患者に安心安全の歯科医療を提供することにはつながらず、悪循環を招くだけである。
 そもそも、初・再診料については医科歯科格差是正の観点からも引き上げが求められる項目である。前述の新型コロナの臨時的措置である、乳幼児診療に対する初・再診料への加算でも、医科100点、歯科55点と不合理な差が設けられている。もともと大きな開きはなかった医科歯科の初・再診料は1980年代以降、格差が広がり、現在、初診料は27点、再診料は20点の開きがある。この差の理由について厚労省は「処置等が主体となる歯科治療の特性上、技術料への評価を重視してきた」との趣旨の見解を述べているが、「歯科技工問題」を通して繰り返し訴えてきたように、歯科の技術料は多くの項目で「コスト割れ」を起こすほどの低い評価となっている。院内感染対策の評価については、施設基準による評価を見直すとともに、初・再診料の医科歯科格差の是正という観点も含め、感染対策にかかるコストを正当に評価した初・再診料への評価を行うべきである。
 その他、この日の中医協では「金パラ」高騰問題についても触れられたが、高騰への対応として、メタルフリーの新規技術の導入・適用範囲の拡大が論点として示されたのみであった。しかし、開業医が直面する最大の問題は、医療機関の大きな持ち出しとなっている「逆ザヤ」の解消であり、制度自体の抜本的な見直しが議論されるべきである。
 強調しておきたいのは、医科の点数設定において、ここまで大幅な「逆ザヤ」が生じる項目はなく、まして、それがそのまま医療機関の持ち出しとして放置される状況は、医科の先生の目から見て「異常」だと映っているということである。初・再診料における医科歯科格差や、「歯科技工問題」の根本原因である歯科の技術料の大幅なコスト割れ、そして、金パラ「逆ザヤ」の放置など、いずれも看過できる問題ではない。医科歯科格差(=歯科の低点数)の是正はもちろんのこと、歯科診療報酬の総枠拡大を強く求めていかなければならない。

(2021年9月)