私たちからの訴え

政府は医療機関に大規模な財政支援を

 第32回を数えた東京オリンピック、そして第16回の東京パラリンピックが8月に閉会を迎えた。「開催すべきだったか否か」など様々な意見、そして総括が求められている異例の世界的イベントであった。五輪開催と新型コロナウイルスの感染急拡大について、厚労相は記者会見で、「人流増加を示す数字は出ていない」などとの見解を述べたが、政府分科会の尾身会長も指摘するように、緊急事態宣言下において五輪を開催するという矛盾が、国民の行動意識に影響を与え、感染急拡大の一因となったことは否めないのではないだろうか。さらに8月末に飛び込んできた菅総理の辞任表明の報。「コロナ対策に専念したい」とのことであるが。自身の逃げ口上に、コロナ対策を使って欲しくはない。
 さて、本題に入る。2019年12月、中国の武漢市において第1例目の感染者が報告された。わずか数ヵ月ほどの間にパンデミックと言われる世界的な流行となった。そこから始まった新型コロナウイルスとの闘い。トンネルの出口は何処にあるのだろうか。ほんの1年前には、「1年延期後のオリンピックの開催時期には」「ワクチン接種がある程度進めば」と、誰もが希望的観測を抱いていた。
 ところが事態の収束は依然として見えてこない。猛威を振るっている「デルタ株」、そして今後の脅威が予想される「ミュー株」など変異株の出現もあったにせよ、変異株の脅威は早々に指摘されていたことで、ある程度予見できた事態であるはずだ。最近では「ブレイクスルー感染」の事例も報告されていることもあり、政府は感染の切り札としてきた「ワクチン頼み」からの脱却姿勢を示しているが、すべてにおいて後手後手に回っている印象は否めない。今後も新型コロナウイルスの変異株とワクチン開発とのいたちごっこが続いていくことになるであろう。今更ながらではあるが、政府には、先を見越した対策をしっかりと講じることをお願いしたい。
 医療体制を維持するための対策として重要なものの一つが医療機関への財政支援である。
 厚労省の発表によると、コロナ禍による受診抑制などの影響により、昨年度の概算医療費は3・8%減と過去最大の減少幅であった。医療機関全体で、金額にして約1兆4000億円の収入減となっており、医療経営への影響は非常に大きくなっている。
 「第5波」までの状況から分かるように、感染拡大の影響は都市部から地方へと時間差的に波及しており、当県も含めた地方では、感染拡大第5波の影響が収入の減少という形で顕わになっているのはまさに今であり、コロナ禍の長期化によって、医療提供体制のひっ迫、医療機関の経営危機はこれから正念場を迎える。また、ブレイクスルー感染も報告されている変異株の拡大により、医療スタッフの感染やクラスターの発生リスクは高まっているが、医療機関・事業所がやむなく休業した場合の公的保障制度も万全とは言えない。
 長年の社会保障費削減路線の影響から、医療・介護の現場はただでさえ厳しい状況が続いてきた。その中で発生した「コロナ禍」によって、医療・介護の現場は、どこも疲弊しきっている。医療機関が「コロナ」にしっかりと対応できる体制を整える、そして地域の医療提供体制を守るためにも、政府は、医療機関のおかれている状況を正確に理解した上で、医療機関への大規模な財政支援も含め、先手を打った対応をとることをお願いしたい。

(2021年10月)