私たちからの訴え

令和3年度介護報酬改定にパブリックコメントを提出

 介護保険は、改定の度に、公的介護サービスの縮小と利用者負担増を繰り返してきた。それによって引き起こされた「介護崩壊」を転換させるには、国が責任を果たし、介護報酬を大幅に引き上げ、かつ、介護保険料並びに利用料の減免の拡充、高額介護サービス費の限度額引き下げなどを行うことである。
 以上を踏まえ、「令和3年度介護報酬改定に伴う関係告示の一部改正等に関する意見募集」に対し、下記の通り意見する。

(提出意見)

1)介護報酬を大幅に引き上げること
 今回の介護報酬は僅か0.7%の改定率とされた。そのうち、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価は0.05%である。コロナ禍にあって、介護事業所はただでさえ厳しい経営状況にある下で、経営回復や介護従事者の処遇改善はもとより、感染症対策の強化を図るには、極めて不十分なものと言わざるを得ない。今後、コロナ禍が長期化し、感染の再拡大ともなれば、経営状況はさらに悪化し、「介護崩壊」が一層深刻になる。ましてや、高齢化や重症化が進む中で増大している介護需要に応えることなどできるはずもない。今こそ、国庫負担を拡充し、介護報酬の大幅引き上げを求めるものである。
 また、基本報酬は引き上げられても、リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)や口腔衛生管理加算など各種加算を廃止して基本報酬に組み込み、実際は引き下げられている項目もある。加算を新設しては廃止あるいは減算するなどを繰り返す方法は、誠に慎むべきである。

2)改定実施を延期すること。少なくとも告示・通知の発出から実施まで十分な周知期間を設けること
 介護報酬改定は、例年、告示・通知の発出が非常に遅く(2015年:告示3/22、通知3/27、2018年:告示・通知3/22)、介護現場は大変な負担を強いられている。コロナ禍にあって、4月改定直前の発出では到底対応できないことを考慮すべきであり、この間の「臨時的な取扱い」(新型コロナウイルス感染症への対応のため、一時的に人員基準等を満たせなくなった場合に介護報酬の減額を行わない等、柔軟に取扱うなど)をさらに充実させた上で、余裕をもって改定への対応が可能となるまで実施を延期すべきである。緊急事態宣言が出され、現状でも介護事業所が大変な状況にある中でも実施に移すのであれば、少なくとも告示・通知の発出から実施まで十分な周知期間を設けることを求める。

3)居宅療養管理指導費における単一建物居住者の減算規定を廃止し、医科歯科格差を是正すること
 単一建物居住者の取扱いは、現場に混乱をもたらすものとして、当会では廃止を求めてきた。そもそも居宅療養管理指導は、「居宅療養上の指導や他の事業所との連携」を評価するもので、訪問人数によって減額される理由にならないことは明らかである。ところが、今回、この取扱いに加えて、医科歯科での単位数に格差を設けたことは大いに問題がある。より実態を踏まえての評価と言っても、分科会資料からは、どのような計算根拠に基づき算出されたのか不明確である。診療報酬上において、医科歯科の点数格差は従前より問題が指摘されているが、介護報酬上にも導入されたことは容認できない。こうした不合理な取扱いは即刻是正すべきであり、緊急再改定を求めたい。

4)介護療養型医療施設の廃止方針を撤回すること
 介護療養型医療施設の2023年度末廃止に向けて、介護医療院サービス費は引き上げる一方、介護療養施設サービス費は大幅に引き下げるとともに、介護医療院等への移行計画を半期ごとに都道府県知事に届け出ていない場合の減算規定を設けるなど、露骨な政策誘導が行われている。しかしながら、介護療養型医療施設は、医学的管理を必要とする患者を支えており、とりわけ、中山間地域が多く、高齢単身世帯が全国4位である山口県においては、必要不可欠な療養病床である。一律に期限を切って、介護施設への移行を強引に進めるのではなく、地域医療に果たしている役割を十分に評価するためにも、介護療養型医療施設の廃止は撤回すべきである。

5)「医療保険と介護保険の給付調整」は廃止すること
 介護保険優先の原則のもと、要介護者・要支援者への医療は、「医療保険と介護保険の給付調整」(「給付調整」)により規定されているが、様々な算定制限があり、不合理が散見される。とりわけ、特別養護老人ホーム(特養)等施設入所者に対する医療については、入所者の重症化が進み、医療必要度が高まっている中で、大きな問題となっている。具体的には、特養の配置医師は、入院患者や重症の在宅患者と同様、常に症状観察と診療を行っているにもかかわらず、保険診療であれば算定できるものが原則認められていない。このことは、高齢者に対する療養の給付の制限であり、実態に即して早急に改善を図るべきである。そのためにも、「給付調整」を廃止すること、少なくとも、特養等施設入所者に対する医療の算定制限を止め、医療行為が正しく評価されるよう求める。

6)科学的介護の推進やテクノロジーの活用をもとに差別化をしないこと
 CHASE・VISITへのデータ提出とフィードバックの活用によるPDCAサイクルの推進・ケアの質の向上の取組みを推し進めるため、各サービス費に科学的介護推進体制加算などが新設されている。今後、データの利活用により導き出された結果が施策に反映されていくが、その際、現場では、事務負担増の問題はもとより、それに対応できない場面が必ず出てくる。事業所によって提供するサービスは様々であるからで、対人援助にあたっては、データだけでは推し量れないものもある。他方で、複数のテクノロジー機器を活用した場合の日常生活支援加算なども新設されたが、業務効率化に向けて機器の購入をしたくても経営面からできないケースもある。にもかかわらず、こうした技術革新等に対応できなければ、淘汰されてしまうことが危惧される。介護保険制度を支える上で、公益性を持つ介護事業所に差別化をもたらさないように見直す責務が国にあることを強く指摘したい。