私たちからの訴え

今こそ金パラ「逆ザヤ」問題の解消を

 円安が進行している。日米の金利差が要因の一つにあげられているが、日銀は先日の金融政策決定会合でも今の大規模な金融緩和策を維持したうえで、長期金利の上昇を容認しない姿勢を鮮明にしたことで、対ドル円は一時、約20年ぶりの130円台後半まで急落した。当然、その大部分を海外からの輸入に頼っている食材やエネルギーは価格上昇し、生活必需品の値上げラッシュだ。原油価格はドルベースでも価格上昇しているので光熱費に至ってはダブルパンチである。安倍政権下で円安誘導すればトリクルダウン理論で経済が回ると言っていたが大企業の内部留保は過去最高を更新するばかりで労働者の収入はほとんど増えず、生活はより苦しくなった。アベノミクスは完全に失敗である。一般消費者にとっては円高であった方がこれほどまで苦しまなくてよかったはずだ。
 さて、そこへもってきてロシアによるウクライナ侵攻である。このドサクサに紛れてタカ派の議員からは「有事に備えて防衛費を2倍に」などという者もいる。社会保障費は自然増すら財源が無いことを理由に削減しているのに国民生活にさほどプラスにならないマイナンバーカードの整備や防衛費の支出には簡単に財源が確保できるのである。憤りや不思議を通り越して滑稽でもある。
 ウクライナ情勢は歯科医療現場にとっては蚊帳の外の話ではない。歯科で使用する保険材料の金属の一つにパラジウムがあるのだが産出量の約4割がロシアであり、もろに影響を受けている。金属材料については市場調査の結果を受けて保険点数に反映されることになっているが、今回の改定分が公開された時点で、すでに市場価格が上回るという「逆ザヤ」状態であった。この異常事態を受けて保団連では対策を要請し今回は5月に緊急改定を実施させるとい
う成果を得た。
 実はこの価格決定システムは我々、材料を仕入れている保険歯科医にとってはかなり問題を抱えたものとなっている。例えば、①随時改定では調査対象が素材(地金)の価格、②調査の期間、サンプル数、価格計算式なども非公開でブラックボックスである、③価格変動の反映が遅い、などが上げられる。①は、調査対象は素材(地金)の価格=材料メーカーの仕入れ値であり、歯科医療機関が実際に購入する合金製品の価格ではないのでメーカーの工賃や材料問屋の上乗せ分は含まれていないという問題がある。②は保団連では価格決定システムの透明性を確保すべく、情報公開請求を行っているのだが厚労省は全く応じようとしない。③は今次改定で直近3ヵ月前までの市場価格を反映するとされていたものが2ヵ月に改められたものの依然としてタイムラグが生じる。地金価格を改定基準にするのなら何も政府機関が調査しなくても、貴金属相場は日刊の新聞等で掲載されているのだから、いくらでもリアルタイムで対応は可能である。保険診療のホストコンピューターのソフトで金属材料に関わる数字を変更すれば毎月の改定だって可能ではないのか、と素人でも考える。金属材料メーカーの歯科医療機関への販売価格は昨今の市場の乱高下で「時価」となり毎日どころか、発注時間帯が午前と午後でも購入価格が異なるという変動ぶりである。
 5月に緊急改定が行われたものの、「逆ザヤ」を発生させる制度そのものの問題は依然として残されている。国が金属を買い取り、各歯科医療機関や歯科技工所に逆ザヤが出ない価格で卸すべきなどの意見もある。どのような形であれ、保険診療は公定価格であり、逆ザヤ分を患者に転嫁することができないシステムである以上、国は、医療機関に「逆ザヤ」が生じることのない制度を構築する責任がある。金パラ「逆ザヤ」については、ウクライナ問題の影響もあり、マスコミに頻繁に取り上げられるなど、国民的関心を呼んでいる。医院経営に長年悪影響を与え続けてきたこの問題は、保険医にとってはまさに「待ったなし」となっている。今こそ国民とともに、制度の改善に向けた運動を進めていくべきである。

(2022年6月)