私たちからの訴え

すべての医療機関に財政支援を

 新型コロナウイルス感染が拡大する中で、「緊急事態宣言」の発出による国民への外出「自粛」要請や、医療機関に受診することによる感染リスクを恐れて受診抑制が広がり、医療機関の減収が深刻化している。この間、山口協会が取り組んだ実態調査でも、医科・歯科診療所、病院での受診抑制と収入減少の傾向は明らかになっている。4月の診療状況について、医科、歯科とも9割が「患者減」(医科88%、歯科96%)と回答しており、「減少率3割」が医科、歯科とも8割(医科76%、歯科85%)となっている。歯科では5割減が15%もあった。こうした傾向は5月も継続している模様であり、診療報酬は2ヵ月遅れで確定するため、今後ますます厳しい状況となってくる。新型コロナ対策が長期戦と言われる中、患者の命と健康を守る医療供給体制を維持するために、医療機関への財政支援が不可欠だ。
 保団連は5月1日、医科・歯科診療所に対して前年実績に基づく概算請求など柔軟な財政支援を国に求めた。また、同日に日本医師会と四病院団体協議会においても連名で概算請求適用を要請し、8日には日本歯科医師会も同様の要請を出している。各医療団体が求めた概算請求とは、地震などの災害において導入されたもので、診療録やレセプトコンピュータが棄損した医療機関が、前年実績にもとづいて自院の報酬額を評価し、概算で支払われる制度である。これが実現すれば、減収が確実に補填され、事業継続が容易となる。
 政府においても医療機関の厳しい実態は把握しており、新型コロナウイルス対策を中心に31兆円を超える第2次補正予算を組み、医療に関して「医療提供体制等の強化」として約3兆円を配分した。この補正予算によって、新型コロナ患者と接する医療従事者に対する慰労金の支給や新型コロナ患者受け入れのために院内感染予防対策を行う医療機関への支援が行われることになっている。これに加えて、診療報酬の6月支払い分において、5月診療分の概算前払いを実施するとした。「医療・福祉事業者への資金繰り支援の拡充」として組まれたもので、融資を利用する医療機関に対して、本来7月に支払われる5月診療分の診療報酬の一部を前払いし、「つなぎ融資」的に利用してもらおうというものだ。前払いしたものは7月支払い分において調整されるため、収入減への支援にはなり得ず、残念ながら医療団体が求めた概算請求とは全く異なるものとなっている。
 6月2日の参議院総務委員会において野党議員から、4月の収益が前年同月比で10・5%減であることを示し、病院全般が受診抑制で減収となり、職員にボーナスを支給できない実態にふれ、「減収補填に踏み切るべきだ」と主張した。橋本岳厚労副大臣は「ボーナスが出ないということがあってはならない」と述べたが、同省の迫井正深審議官は減収補填には踏みこまなかった。旅行業者や宿泊施設の経営困難はマスコミでも報道されているように、行政による直接的支援も始まっている。しかし、医療機関の経営的な困難状況はほとんどニュースになっていない。今のところ減収状況が長期間続けば、倒産する医療機関も出てくる可能性がある。我慢の時期だとあきらめないで、医療という公的な器を守るために、日本の医療機関がおかれている大変な状況を国民に知ってもらい、効果的で即効性のある財政支援を行うよう声を上げる必要がある。

 (2020年7月)