私たちからの訴え

「基本診療料」とは絶対的評価ではないのか?!

 保険診療においては、我々医師が患者を診察するという診療行為に対する対価は患者および保険者に請求することができるということが、健康保険法(以下、健保法)に謳われている。その報酬は厚生労働大臣告示、つまり診療報酬点数表では「基本診療料」と称されているが、例えば、一丁目一番地である「初診料」の算定の原則は、「患者の傷病について医学的に初診といわれる診療行為があった場合に初診料を算定する」となっている。これは「再診」、「再診料」に置き換えても同様な解釈となる。健保法ではこの診療行為に対する対価について、療養の給付を担当した保険医療機関は、その診療報酬を請求する正当な権利があることが保障されている。お役所的な回りくどい言い方をしたが、要は医師・歯科医師免許を取得し保険医登録をした医師・歯科医師が、保険証を持参した患者を診察すれば報酬を受け取れる。至極当たり前のことである。しかしながら、どうもこの原則がお役人や議員たちには理解されていないようである。
 本邦では国民皆保険制度により保険診療を行う限り、健保法ではその報酬は公定価格として定められている。つまり、保険診療である以上は「値引き」などない。ところが、社会保障制度改革の一環で高騰する医療費を削減するため厚生労働省(以下、厚労省)は診療報酬の度重なる「値引き」を断行してきた。中央社会保険医療協議会(中医協)もそれを容認してきた。改定毎に予算が削減されるため、限られた枠の中でパイを取り合ってきた。そのため、消えていった点数も数知れないが、とりわけ患者を診察するという最も基本的な診療行為、すなわち「基本診療料」さえも削減されている。まず患者を診察するというところから始まる診療行為は、今も昔も、古今東西、普遍的なものであり、その対価は上がりこそすれ、下がろうはずがない。しかしながら、厚労省は「基本診療料」の削減分は毎回「加算」という〝人参〟で穴埋めをしたと主張し、現場の批判をかわし続けている。私に言わせれば「確かに基本診療料は下がりますが、加算を算定すればほぼ帳尻は合います。ただし、施設基準を満たすのが条件になりますが」としか聞こえてこない。厚労省は「基本診療料」の下げ幅をごまかすために、新たな「加算」を新設し算定するよう誘導してくる。日本医師会も旗を振っているのが気に入らない。ここで施策誘導に乗っかってしまえば厚労省の思うツボである。我々はこのからくりをしっかりと認識しておくべきである。
 ここ数年の間で「かかりつけ医」という言葉が一人歩きし、時間外対応加算、明細書発行体制加算、地域包括診療加算、認知症地域包括診療加算、薬剤適正使用連携加算、機能強化加算など次から次へと新たな「基本診療料」の「加算」が新設されてきた。全てを否定するわけではないが、「加算」による増点は見せかけに過ぎない。地域の医療機関はこれら「加算」の算定要件に関係なく、従前より地域住民の〝かかりつけ〟として地域医療に貢献してきたはずである。にも関わらず、「加算」を算定できる医療機関と算定できない医療機関とに分けられてしまっている。施設基準を満たせないため「加算」を算定できない医療機関、算定要件を満たしていても届け出ていない医療機関、届け出ているが算定していない医療機関など形態は様々である。新たな「加算」が新設される度に医療界は分断され、時代遅れの医療機関は取り残されることになる。患者のフリーアクセスを阻害し、人頭割登録医制を加速させるような「基本診療料」の削減と「加算」には反対である。

(2020年6月)