私たちからの訴え

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しに関するパブリックコメントを提出(2021/12/22)

「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の見直しに関する意見

【総論】
 初診からのオンライン診療(以下、「オンライン初診」)を認めるとした指針の見直しに対し、強く異議を申し立てる。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、時限的・特例的な取扱いとして導入された「オンライン初診」は、今回の指針見直しの中で恒久化するとされた。オンライン診療において、「初診については原則直接の対面」との文言が削除され、原則「かかりつけの医師」(日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師)が行うこと、さらには「かかりつけの医師」以外の医師でも、「医学的情報が十分把握でき、実施可能と判断」した場合や「診療前相談」を行うなど要件を満たせば「オンライン初診」が可能となっていることは、到底認められるものではない。
 この間の議論を見ても、デジタル化への集中投資として医療のマーケット化を目指す規制改革推進会議等からの強い提言により、コロナ禍に乗じて「オンライン初診」の恒久化をなし崩しに導入したと指摘せざるを得ない。もともと離島や僻地などで受診困難な患者に対応するための遠隔診療が、仕事等が多忙で受診困難な患者に対する手軽なオンライン診療へとすり替わり、ビジネスチャンスが盛んに喧伝され、営利企業が巨額な利益を得ることを目的に推し進められてきた。加えて、規制改革推進会議のメンバー等からは、オンライン診療を導入・拡大させるために診療報酬点数の引き上げを求める意見もあるが、導入コスト、ランニングコスト、セキュリティソフトを含む機器等の設備投資にかかる高額な費用についての説明は一切なされない。結局は、企業利益追求のための意図的な発言と言わざるを得ない。
 そもそも、時限的・特例的な取扱いの中で、安全性や信頼性を含め、オンライン診療の医学的エビデンスが構築できるはずもなく、ましてや「オンライン初診」については不可能である。一般社団法人日本医学会連合会が作成した「オンライン診療の初診に適さない症状」では、日常診療の上で、多くの疾患が「適さない」とされており、事実上、「オンライン初診」はできないことを明確にしている。つまり、今回の「オンライン初診」を可能とする指針の見直しそのものが、医療現場の実態からかけ離れているのであり、さらには、この見直された指針に基づいて今後検討される保険診療上のルールや診療報酬上での評価において、どのように実態との整合性を図るのか甚だ疑問である。
 したがって、当会は、今回の「オンライン初診」を恒久化する指針見直しには、断固反対する。「医療は対面診療が原則」という根本から、遠隔診療の本来あるべき姿に立ち返らなければ、医療行為そのものが営利化、産業化しかねない。それは、医療の否定につながることを政府として認識しなければならないことは言うまでもない。

【各論】
1)「かかりつけの医師」及び「診療前相談」について
 今回の指針見直しにあたっては、「かかりつけ医」とは別に、「かかりつけの医師」として新たな定義付けが行われている。「かかりつけ医」に明確な定義がないことから、指針上は、「かかりつけの医師」(日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師)が行うことを原則として「オンライン初診」を解禁したものである。その上で、「医学的情報が十分に把握でき、患者の症状とあわせて医師が可能と判断した場合」や、「かかりつけの医師」がオンライン診療を行っていない場合などに「診療前相談」(※①)を行えば、「かかりつけの医師」以外の医師であっても「オンライン初診」は認めるとしている。つまり、どの医師でも「オンライン初診」は可能とされたものに等しい。そのために、「初診は原則直接の対面」という文言を削除し、「オンライン初診」と直接の対面診療を組み合わせることでよいとしている。対面診療の補完であったオンライン診療の位置づけを180度転換させるものであり、大問題である。
 オンライン診療は、指針上、「対面診療が原則」ではなくなり、どの医師でも状況により「オンライン初診」を実施可能となれば、診療報酬上での評価にも大きな影響を及ぼすことが懸念される。当会は、「初診は原則直接の対面」とする文言を復活させることとあわせ、「かかりつけの医師」や「診療前相談」など政策的意図を汲む内容を診療報酬点数表に持ち込まないよう求める。

(※①)「診療前相談」とは、「かかりつけの医師」以外の医師が初診からのオンライン診療を行おうとする場合(医師が患者の医学的情報を十分に把握できる場合を除く)に、医師-患者間で映像を用いたリアルタイムのやりとりを行い、医師が患者の症状及び医学的情報を確認する行為(診断、処方その他の診療行為は含まない)

2)「オンライン初診」に適さない症状及び「オンライン初診」の場合に行わない処方について
 オンライン診療の実施可否の判断については、一般社団法人日本医学会連合会作成の「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえて医師が判断するとされている。その内容からは、臨床所見の多くが「オンライン初診」には適さないことが示唆された。また、「オンライン初診」にあたり医薬品の処方を行う場合も、同連合会作成の「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」等の関係学会が定める診療ガイドラインを参考に行うこととされている。ここでも、「直接の対面診療に基づき」との文言が削除された一方、「オンライン初診」の場合に行わない処方(※②)も示された。不適切な処方事例は、指針見直しの検討会でも報告されているが、時限的・特例的であっても「オンライン初診」を認めた弊害であると言える。
 このように、診療側では、「オンライン初診」は対応不可と考えており、また、これまでの事例でも問題が指摘されているにもかかわらず、医療の効率化を推し進める規制改革推進会議等が、無理やり「オンライン初診」を導入しようとする意図が見て取れる。こうした動きと同じ土俵での議論は成立しないことから、「医療は対面診療が原則」という根本を貫いた指針に見直すよう求める。

(※②)「オンライン初診」の場合に以下の処方は行わない
・麻薬及び向精神薬の処方
・基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する、特に安全管理が必要な薬品(診療報酬における薬剤管理指導料「1」の対象となる薬剤)の処方
・基礎疾患等の情報が把握できていない患者に対する8日分以上の処方