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2018年度診療報酬改定「現時点の骨子」にパブリックコメントを提出

 次期診療報酬改定について、1月12日の中医協総会で諮問があり、厚労省は「これまでの議論の整理案」(「現時点の骨子」)を示し、パブリックコメントを募集していました。当会では1月19日に意見を提出しました。


1)今回の診療報酬改定に対する全体的な意見

(内容)今次診療報酬の改定率について
 今回も、1・19%の大幅マイナス改定となり、薬価のマイナス分は本体に振り替えられなかった。さらに「外枠改定」として、大型門前薬局に対する評価の適正化が示され、これを加えると更にマイナス幅は増えることとなる。2002年以降、引き下げられてきた診療報酬は、累計で10%にも及ぶわけであり、今回の改定率は、全く受け入れられるものではない。
 国は企業に対して3%の賃上げを要求しているが、医療機関の原資となる診療報酬は削減し続けている。保険医療機関は得られた診療報酬から人件費、光熱費等の支出、債務を返済しており、診療報酬全体での大幅なプラス改定でこそ、医療経営の安定とともに医療従事者の賃上げも可能となる。また、医療の質と安全を担保し、国民医療の水準を高め、崩壊の危機にある医療現場を改善することは、全体でのプラス改定以外にない。そのためにも、「財政中立」ではなく、必要な財源をきちんと配分する予算編成に見直すべきである。

2)「現時点での骨子」の項目に係る意見

【項目番号 Ⅰ-2】かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価
【項目番号 Ⅰ-4】外来医療の機能分化、重要化予防の取組の推進

(内容)かかりつけ医機能の評価について
 かかりつけ医機能を推進する観点から、地域包括診療料等や小児かかりつけ診療料に関する要件緩和が示されているが、そもそも、かかりつけ医と診療報酬を紐付けして評価しようとするベースには「人頭払い制」がある。この点は、財務省が提言する「登録医制度」からも明らかであり、政策的意図を持った、かかりつけ医機能の推進には反対する。したがって、要件緩和ではなく、本点数そのものを廃止することを求めるとともに、かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価について、加算等で設定することは当然認められない。そもそも地域の開業医は、主治医機能の役割を十分に果たしており、その機能を診療報酬上で評価するのであれば、地域包括診療料や加算等ではなく、すべての医療機関が算定できるよう、基本診療料を大幅に引き上げることを求める。

(内容)かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)について
 か強診については、施設基準に関して一定の要件の追加や内容の見直しが図られているが、そもそも、か強診には、「医療の質の向上と無関係な施設基準」「1物2価(3価)」などの根本的に不合理な点を内包している。これらの問題について抜本的な見直しが図られないのであれば、か強診の枠組みそのものを廃止すべきである。

【項目番号 Ⅰ-3】医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価

(内容)入院基本料の新評価体系について
 一般病棟入院基本料及び療養病棟入院基本料等について、新たな評価体系への再編・統合が示された。一般病棟入院基本料においては、10対1をベースとすることで7対1の病床削減が狙われ、また、療養病棟入院基本料については、20対1に一本化する一方、財政制度等審議会は医療必要度の要件を厳格化することを求めている。25対1の医療療養病床は2年間の経過措置を設けるとは言え、大幅な点数引き下げが予測される。そうなれば、必然的に転換先が「介護医療院」しか残らなくなる。つまり、この新評価体系に「介護医療院」を加えれば、地域医療構想における病床機能区分に見合うものとなり、目的は病床削減を意図していると言わざるを得ない。しかも「急性期医療」「急性期医療から長期療養」「長期療養」の3つの機能に分けることで、病床機能報告の内容も整理されるために、2年間程度で集中的に検討される地域医療構想調整会議の協議に向けた土台も整うことになる。経済・財政再生計画改革工程表2017改定版では、都道府県別の診療報酬の特例の活用に関する運用の考え方を今年度中に周知することも示され、まさに、中央社会保険医療協議会で発言があった「地域医療構想に寄り添う診療報酬」となっている。機能分化のために病床削減を進める地域医療構想に対し、診療報酬を関連付けて誘導することは問題である。とくに、療養病床については、適切な医療が行える環境を整備した上で、地域医療に果たしている役割を十分に評価し、経過措置はもとより、廃止そのものを撤回すべきである。

(内容)入院患者の他医療機関受診に係る減算の取扱いについて
 がんで入院中の患者が、他医療機関を受診する場合の減算の取扱いの緩和等が示されたものの、こうした減算規定そのものが、入院患者の他医での専門的な医療を受ける権利を阻害することにつながり、認められない。したがって、入院患者の他医療機関受診にかかる減算規定はもとより、他医療機関における投薬、注射等の算定制限は廃止すべきである。同時に、医療機関間の「合議による精算」の規定も、健康保険法の趣旨からして大問題である。明確な法的根拠もなく、この取り扱いが拡大していけば、現物給付の原則、ひいては保険診療の崩壊にもつながるゆゆしき問題であり、「合議精算」規定は廃止するよう求める。

【項目番号 Ⅰ-5】質の高い在宅医療・訪問看護の確保

(内容)複数の医療機関が連携して行う在宅医療について
 在宅患者訪問診療料や在宅時医学総合管理料、訪問看護の指示において、複数の医師や医療機関が連携して行う場合の評価や要件の見直しが示されているが、かかりつけ医機能の推進を前提として、主治医とそれ以外の点数に格差を設けたり、対象患者を限定せずに評価すべきである。同時に、現場に混乱をもたらしている同一建物居住者や単一建物診療患者の取扱いなど一物多価の規定の即時撤廃や、在宅医療の推進を阻む在宅療養支援診療所等における看取りや緊急往診の実績要件の廃止を求める。

(内容)歯科訪問診療料及び在宅患者等急性歯科疾患対応加算等の加算について
 在宅患者等急性歯科疾患対応加算(急性対応加算)について、歯科訪問診療料を算定するほぼすべての医療機関で算定されているとの理由で、評価の見直しが検討されているが、歯科訪問診療料が急性対応加算を含む評価とされた場合、実質的に点数引き下げとなることが危惧される。歯科訪問診療料については、国として歯科における在宅医療を推進しているという観点からも、実質的な引き上げとなるよう見直すべきである。

【項目番号 Ⅰ-6】国民の希望に応じた看取りの推進

(内容)特別養護老人ホーム等施設入所者に対する医療について
 特別養護老人ホーム(特養)等施設入所者に対する医療として、ターミナルケアに係る診療報酬等の算定の評価が盛り込まれたが、根本的な問題として、「医療保険と介護保険の給付調整」(「給付調整」)による医療の算定制限がある。とくに、特養等施設入所者に対する医療は際立っており、入所者の高齢化や重症化が進む中、特養の配置医師は、入院患者や重症の在宅患者と同様、常に症状観察と診療を行っているにもかかわらず、通常の外来患者や在宅患者であれば算定できる保険診療が入所者には認められていない。「給付調整」による不合理の最たるものであり、医療と介護の同時改定であるからこそ、「給付調整」の廃止を求めたい。少なくとも、特養等施設入所者に対する医療の算定制限を止め、医療行為を正しく評価するべきである。

【項目番号 Ⅰ-7】リハビリテーションにおける医療と介護の連携の推進

(内容)維持期リハビリテーションについて
 要介護者等に対する維持期リハビリテーションについて、算定可能期間を平成30年度末までとし、介護保険への完全移行が目指されているが、介護保険では、通所リハビリテーション施設等の受け皿の問題と当時に、支給限度額によって必要なリハビリテーションが受けられなくなる可能性もある。そもそもリハビリテーションは、医師の診断の下、専門職によって行われる医療行為であり、患者の病態に応じて医療保険から給付すべきである。同時に、維持期リハビリテーションの廃止は撤回するとともに、減算規定を無くし、点数を引き上げるよう求める。

【項目番号 Ⅱ-1-7】口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進について

(内容)初・再診料について
 院内感染防止対策を推進する観点から初・再診料の引き上げを行うとともに、院内感染防止対策に関する施設基準を新設し、その新施設基準を満たさない医療機関については、初・再診料を減算する内容が盛り込まれているが、院内感染対策は、当然、全ての医療機関で行われなければならないものであり、院内感染対策が不十分な医療機関を懲罰的に減算すれば済むというものではない。患者の目線に立てば、全ての医療機関で安心、安全の歯科医療を受けられることが求められているのであり、そのために院内感染対策を強化するのであれば、基本診療料は等しく引き上げられるべきである。
 そもそも、初・再診料については、医科歯科格差是正の観点からも引き上げが求められている項目であり、院内感染対策への対応とは別に、全ての歯科医療機関に対する初・再診料の引き上げを行うべきである。

(内容)歯科固有の技術の評価について
 処置・歯周治療・手術・歯冠修復・有床義歯など、歯科医療の基礎的な技術料は長年低く据え置かれており、「歯保連試案」等の資料に示される通り、人件費・材料費などの必要コストの面から、本来必要となる点数と大きくかい離している。これら基本的な技術料の引き上げこそ、優先的に行われるべきである。

【項目番号 Ⅱ-2】医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションやICT等の将来の医療を担う新たな技術を含む先進的な医療技術の適切な評価と着実な導入

(内容)遠隔診療の評価について
 情報通信機器を活用した診療として、いわゆる遠隔診療を評価することが示されているが、現時点において、国民の質と量を担保する診療報酬上での評価に整合性があるとは思えない。むしろ、ビジネスチャンスとして動く企業の営利目的の側面が強く反映されたものと言え、これが拡大していけば、医療行為そのものを産業化することにもつながり、ひいては、医療の否定につながる。診察は、患者との直接の対面診療が原則であり、それを補完するのが遠隔診療であって、今次改定での拙速な導入は止めるよう求める。また、遠隔診療の導入により、医学管理料等の設定も含めて新たな問題が浮上してきているが、とりわけ、現在示唆されている電話等再診料の引き下げは、到底認められない。

【項目番号 Ⅱ-3】データの収集・利活用及びアウトカムに着目した評価の推進

(内容)アウトカム評価について
 回復期リハビリテーション入院料を皮切りに、ニコチン依存症管理料、精神科デイ・ケア等、摂食機能療法の経口摂取回復促進加算など、診療報酬上に「アウトカム評価」という成果主義の評価が拡大してきているが、それをさらに推進することは容認できない。成果が出た結果の対価としての報酬体系は、「療養の給付」の原則から逸脱するものである。

(内容)明細書無料発行の取組みについて
 明細書無料発行の取組を進めることが示されているが、明細書発行の義務付けをやめるよう求める。患者が求めているものは、明細書による医療費の内容ではなく、自らの病気の内容や医療行為の内容(検査結果や治療効果など)であり、医療機関では日常診療において患者との対話の中で提供しているものである。明細書を発行し、医療費の内容や仕組みの理解につながるとしても、その説明は制度を定める国や保険者が行うべきである。

【項目番号 Ⅲ-2】業務の効率化・合理化

(内容)診療報酬に係る業務の効率化・合理化及びデータの利活用推進について
 診療報酬に係る業務の効率化・合理化及びデータの利活用推進については、「支払基金業務の効率化・高度化計画」と「データヘルス改革推進計画」とマッチングして進められようとしている。
 前者の計画の最大の目的は審査のコンピュータチェックであり、そのためのレセプト様式の見直しなどが打ち出されている。目指すところは、韓国HIRAの方式であり、審査基準の統一化を図ることで、保険診療を平均値に止めさせるために、必要な医療が制限されるなど、現物給付を原則とする保険診療の在り方を否定することが懸念される。一方、後者の計画では、国民の健康の確保を謳いながら、ビッグデータの活用を推進していくものであり、次世代医療基盤法を活用して、レセプトデータを匿名加工情報化して使用しようとするものである。しかし、レセプトは「療養の給付に関する費用」の請求明細であり、それ以外に利用することはレセプトデータの目的外使用に当たると言える。情報漏えいが発生した場合の医療機関の責任と同時に、国民のプライバシー権の侵害にも係る重要な問題であることを指摘したい。
 また、データの利活用に向けた見直しとして議論されている、レセプトへの患者氏名カタカナ表記や郵便番号記載などは審査上全く必要のない情報であり、レセプト様式をこれ以上煩雑にすることは認められない。ただでさえ、レセプト提出直前は点検、確認作業のため、深夜まで残業を強いられており、レセプト請求業務の作業効率がこれ以上悪化することは、国が進めている職場での「働き方改革」に逆行することになる。

【項目番号 Ⅳ-8】医薬品、医療機器、検査等の適正な評価

(内容)医療用保湿剤の保険給付外しについて
 血行促進・皮膚保湿剤(ヘパリンナトリウム、ヘパリン類似物質)の保険給付の適正化が示されているが、健康保険組合連合会が発表した政策提言「保湿剤処方のあり方」に端を発している。美容目的での使用が疑われることを問題視したものであるが、現段階で、医療用保湿剤の単剤処方や大量処方が美容目的と断定できる客観的な根拠がない。また、保湿剤による継続した治療によって皮膚の乾燥症状の悪化を防ぎ、患者のQOLを維持・向上させる上で重要な役割を果たしている。治療が必要な皮膚科疾患を有する患者に対する処方が制限されることはあってはならず、医療費削減を目的とした「市販品類似薬の保険外し」と連動させ、医療用保湿剤の保険給付外しを行ってはならない。

 以上