私たちからの訴え

金パラ高騰問題 「逆ザヤ」は国の責任で解消せよ

 歯科治療に欠かせない金属材料である金銀パラジウム(金パラ)が、2019年秋以降高騰を続け、歯科医療機関の経営を大きく圧迫しています。保団連の「金パラ逆ザヤシミュレーター」による実勢価格調査(継続中)では、2020年2月現在の購入価格平均(税込・30グラムあたり)は、2019年9月時点で5万9276円、10月には6万3987円、11月には6万5633円、12月には6万7900円、2020年1月には7万7535円、2月には8万1397円と、天井知らずに高騰を続けています。現在、金パラの保険償還価格は2019年10月改定時の5万250円で、2020年2月時点で実勢価格との差額(逆ザヤ)は3万円を超えており、金パラを 30グラム使うごとに約3万円の赤字を生むという状態です。医療経済実態調査によると、歯科医療機関の月の収支差額の最頻値は約51万円という状況の中、最頻値に該当する大多数の歯科医師にとって、この規模の逆ザヤは非常に大きな負担となっています。
 価格高騰の主な理由は、原材料であるパラジウムの工業需要の増加に加え、国際的な投機の対象となっていることが大きな要因であり、現在、金やプラチナを超える価格となっています。一方、「逆ザヤ」が生じる原因は、保険点数の決定方法自体に問題があります。歯科治療用貴金属材料価格は、改定年度に行われる「基準材料価格改定」と、次回改定までの間に計3回実施する「随時改定」により、最大で4回見直しが行われます。しかし、いずれの改定でも調査結果が保険点数に反映されるまでに約半年のタイムラグが必ず生じるため、今回のような価格急騰が起こった場合には対応できない制度となっています。さらに、前述の実勢価格調査は非公開調査とされており、調査対象の選定や調査結果が適正に反映されているかどうかの検証ができないなど、調査の透明性にも問題があります。
 一番の問題は、現行システムの制度的欠陥によって生じた「逆ザヤ」を、個々の医療機関が負担させられているという現状です。しかし、2020年4月に行われるであろう「基準材料価格改定」での金パラ価格は、価格決定の仕組みとして1月以降の価格変動は反映されません。金パラの高騰は、2月現在も終息の見通しは立っておらず、このままでは2020年4月改定での「逆ザヤ」解消は望めない状況です。すでに歯科医療機関の負担は限界にきており、これ以上の逆ザヤが拡大すると、金パラを用いた歯科治療が継続できなくなる事態も想定され、ひいては、国民が受けられる歯科医療の質にも直結します。希少金属を使用するという特性上、金属価格の価格高騰のリスクは常にあり、制度そのものの見直しや、金パラに代わる代替材料にも踏み込んだ抜本的な改革が必要ですが、それには制度や法律の整備なども含め多大な議論と時間が必要となることが予想されます。保険診療上の材料は、種類・価格が国により統制されている以上、当然その管理責任は国にあります。制度そのものの見直しとは別に、現在生じている「逆ザヤ」を解消する措置を国は緊急に講じるべきだと考えます。
 また、前述の保団連の調査結果に基づく推計によると、2020年2月時点での1ヵ月当たりの「逆ザヤ」による損失額は約40億円であり、2019年10月~2020年2月の5ヵ月間に限っても約200億円に上ります。2020年4月の診療報酬改定は0・59%のプラス改定(薬価引き下げ分を含まず)とされましたが、これに要する財源は約180億円程度と推測され、すでに今回の改定財源を超える規模の損失が生じています。今後、「逆ザヤ」を解消する何らかの措置が取られたとしても、それまでに生じた損失もまた無視できる額ではなく、これに対する補填も当然行われなければなりません。

(2020年3月)