私たちからの訴え

質のよい歯科医療を提供するため、歯科の低点数政策の打破を

 平成30年度の診療報酬改定の概要が公表された。毎度のことながら歯科に関しては憤りを通り越してため息しか出ない内容である。
 結論から先に述べると、今回も加点や増点は施設基準絡みがほとんどで、一般開業医が望んでいる初・再診料や日々の診療での頻出処置・手術に対してはわずかであった。
目玉は初・再診料に院内感染防止対策に関する施設基準が新設されたことであろう。これは過去の読売新聞の「タービン使い回し」の報道が大きく影響していると考えられ、支払側か公益委員から出たのであろう。
 アメリカの歯科ではすべての人に適応されるスタンドプリコーション(標準予防策)が提唱されて「来院患者は感染者かもしれない」前提で日々対応している。世界どこでもこれが一般的であるのが正しい医療現場である。しかし、これは自費診療が基本のアメリカだからできることで、現在の日本の保険診療の歯科の初・再診料で同じ対応をしたら間違いなく赤字である。そうした費用の手当も十分でなく、さらに施設基準を満たさなければ減点とは保険財政の赤字を歯科医療機関につけ回しているとも言える。
 前回改定時から導入された「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」は「1物2価」で歯科医療機関の差別化を図るものだと当会では廃止を訴えてきたが、廃止どころか施設基準要件が増えている。過去1年のSPTや訪問診療の算定歴が新たに加わった。まるで学会認定医のような基準である。そもそもこうした需要のない地域の歯科医療機関はどうなるのか。また地域連携にかかる要件の変更で地域ケア会議の出席、自治体等が実施する事業への協力、学校医等の就任などが増えている。これらは自治体と地元歯科医師会の間での契約が多く、希望しても就任できないケースもありえる。在宅療養支援歯科診療所(歯援診)を含め、歯科衛生士が不足している現状では歯科衛生士の配置要件の撤廃などを訴えてきたが受け入れられず、さらに算定要件も増えている。
 また、これまでも施設基準の要件で高価な機材を必須としているものが多数あったが、今回新設された咀嚼能力検査なども同様で検査を行うために機材を揃えなければならない。にもかかわらず、加点は機材購入に見合うものではなく、資金繰りも大変である。制度設計をしている厚労省は歯科医療の現場を熟知しているのだろうか。訪問診療の20分ルールも然りである。これからも保険医協会では実態にあわない算定要件の撤廃を訴える運動を継続していく。
 処置や補綴に関しては、広範な項目で点数が引き上げられたものの、その上げ幅はごく僅かであり、歯科医療機関の厳しい現状を改善するには不十分である。日本歯科医師会は時間給(タイムスタディ)を元に診療報酬改善を求め続けてきたが、歯科の技術料は長年低く抑え続けられてきている。医科、特に外科系学会社会保険委員会連合(外保連)が必要経費の原価計算に基づき適正点数を算出した「試案」を交渉の資料として採用したところ、約10年かけて、十分とはいえないものの改善に向かっているという状況がある。これに倣い、9年前に歯科でも歯学系学会社会保険委員会連合(歯保連)が設立され、2年前には「歯保連試案」を公表した。これによると、例えば「生活歯歯冠形成(4/5冠・FMC)」は2018年3月現在の保険点数表では306点、「抜髄(単根管)」は228点であるが、歯保連での評価はそれぞれ634・7点、807・7点に相当する。この資料の存在を保団連の代議員会などで当協会から紹介したところ、保団連、各都道府県協会の歯科役員の中にも賛同者が徐々に増えている。歯科会員の先生方にもこの資料の有用性を知って頂き、国民に質のよい歯科治療を提供するため、かつ歯科の低点数政策の打破のために役立てたい。