私たちからの訴え

考える前に飛べ

 私は、いつの間にか年を取り、67歳になりました。今年になって息子に診療所も譲りました。今は、家内のしていた介護施設を経営しています。
 今までの有床診療所とすることはあまり変わらないのですが、先日このようなことがありました。それは、こちらがお金を払ってわざわざ外部評価を依頼したにもかかわらず、介護計画をしっかり立てていなかったため、2ヵ月分の介護費用を返せと言う厳しい内容でした。入院していた方が施設に戻ってきたので、そのまま元のように介護していただけであり、なぜ否定されるのか理解できません。介護する職員の必要人数もやたら厳しくて、管理者、ケアマネ、介護する人が何人必要だとか、揃っていないと介護費用の30%減額など、ペナルティがあります。しかも、頻繁に調査に来ます。働く人も少なく、人を集めるために給料がどんどん上がっていきます。経営が厳しく、困ったものです。
 少し時間に余裕ができたので、産業医を取るために、産業医講習会を受講しに東京の日本医師会館まで行きました。土曜、日曜とつぶして講義を2日間ミッチリ聞くと大変疲れましたが、それでも前期の14単位しか取得できませんでした。産業医に必要な50単位を取るのは、すごく大変なことだと思いました。少なくとも半年はかかりそうです。先は長いし、費用はかかるし、コストパフォーマンスが悪いです。
 しかし、東京の研修会には大勢の人が日本全国より集まってきており、日本にはこんなに医者がいるのかと感じました。地方にはいないのに……。地方の医師不足は、想像よりも深刻のようで、私のような高齢者でもぜひ手伝いに来てほしいと頼まれます。あっちこっちに引っ張りだこで、嬉しい悲鳴ではあります。高校の同級生で働いているのは私だけです。あまり力や体力も要らないので年でもできるし、医師不足だからなのか、アルバイト先は割とあります。私は少子高齢化の恩恵を受けているのでしょうか。「年を取ってまでなぜそんなに働くのか」とか「いつまで働くのか」などとよく聞かれます。よくは分かりませんが、診療所のリフォームなどに費用がかかり、借金が増えたからのようにも考えられます。借金を返すために必死で働くというのは、ごく当たり前のように思うのですが、周りはそうは思わないようで、世の中のために年をとってもよく働く、『赤ひげ先生』のような、良い先生だと、変に誤解されているようです。
 誤解といえば、なぜ医者になったかという所から始まります。別に親が医者でもありませんし、何かに感動したからとか、誰かに憧れたからとか言うこともありません。国立大学の医学部に入るのが難しかったので、自分が優秀だと勘違いして何となくトライしてみただけです。医学部に入ったので、医者になるしかなかった。医者になったら少しかっこいいかな、とは思いました。でも、どちらかというと天邪鬼で、上司に従わないタイプなので、サラリーマンになっていたら、きっと落ちこぼれていたと思います。自由な開業医で良かったと思います。
 最近、新しく開業する若い医師が少なくなってきました。保険医協会の会員数も減ってきました。あれこれ考えるから開業できなくなるのではないでしょうか。そこで「考える前に飛べ」と主張したい。飛んで落ちたら自己責任です。しかし、「落ちない」ように、保険医協会はあらゆる面で先生方をサポートさせて頂きます。

(2019年5月)