私たちからの訴え

第三期山口県医療費適正化計画(素案)に対してパブリックコメントを提出

 県では、2018~2023年度までの「第三期山口県医療費適正化計画」の策定にあたり、パブリックコメントを募集していたことから、当会では、1月16日に意見を提出しました。


 医療費適正化計画は、後期高齢者医療制度を導入した2006年の「医療制度改革」において、「医療費適正化に向けた総合的な対策の推進」のために都道府県ごとに策定が義務付けられ、以後、5年ごとの見直しを経て、今回が第三期目の策定となっている。「国民皆保険制度」を「持続可能」とするために、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する」体制の確保を図るとしているが、年々増加する医療費の削減が目的となっていることは明らかだと言える。
 「2006年医療制度改革」は「骨太の方針2005」に対応して進められたもので、この「骨太の方針」は、今や社会保障制度改革の財政的な基本方針と位置付けられている。社会保障費の自然増抑制(2016~2018年の伸びを1兆5000億円に抑える)をスタートさせた「骨太の方針2015」以降、医療費に関しては「地域差の是正」が重要事項となっており、医療費適正化計画での目標設定が求められた。「骨太の方針2016」において、入院医療費、外来医療費ともに「地域差半減を目指す」とされる中で、2017年末の経済財政諮問会議では「経済・財政再生計画改革工程表」の改定版を決定し、2018年度から縮減効果などの進捗管理を強化することを明記した。今回の第三期医療費適正化計画がそうしたもとでの策定となっている点を、私たちは重く見ている。
 そうした点をふまえて「第三期山口県医療費適正化計画(素案)」(以下「素案」)に対して意見を述べる。

1.病床削減を前提とした「医療費適正化」としないこと

 入院医療費抑制は「医療費適正化」の重点であり、「第一期」「第二期」の医療費適正化計画においては、「医療の効率的な提供」と称して「療養病床の再編成」や「平均在院日数の短縮」が目標とされていた。今回の「素案」にはそのことは盛り込まれていないが、医療費適正化計画と地域医療構想とを連動させることが「骨太の方針」で示されており、病床削減によって入院医療費「地域差半減」を目指す意図が伺える。「素案」の「計画期間における医療費の見込み」では、「地域医療構想に基づく病床機能の分化・連携の推進の成果を踏まえ」た推計によって効果を示しており、地域医療構想の実現が前提になっている点は、病床削減との関連で危惧するところである。地域医療構想については、構想区域ごとの「調整会議」での自主的な協議に委ねられており、その「効果」を予め数字で示すことに疑問を感じざるを得ないが、いずれにしても、病床削減を前提とした医療費適正化とならないよう求めたい。

2.高齢者医療確保法を活用した県独自の診療報酬の設定を行わないこと

 前述の「計画期間における医療費の見込み」の明示は、医療費の地域差の半減に向けて、「どの程度の縮減が見込まれるかを明らかにする」ことを求めた「骨太の方針2017」によるものと考えるが、これに対して、「骨太の方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」に基づく「改革工程表」の「2017改定版」(2017/12/21決定)において、2018年度より「縮減効果等の進捗管理を進めていくとともに、所要の検討を行う」としている。「素案」では、67億円を医療費適正化の「効果」として見込んでおり、その実現に向けた「進捗管理」が求められることになるが、すでに「十分な縮減を図ることができない場合」の対応の検討例として、高齢者医療確保法第14条(診療報酬の特例)の活用が示されている。国では、県別の診療報酬設定についての運用の考え方を2017年度中に周知するとしており、その導入が現実的なものとなっている。診療報酬は、国民皆保険制度の下で国民が受ける医療の質を保障するために定められた医療行為の価格であり、県ごとに異なることはありえない。高齢先進県である山口県では医師も高齢であり、さらに後継者も不足している状況にある中で、医療機関における人件費、光熱費の支出、債務の返済等の原資でもある診療報酬が他県より低く設定されれば、山口県での承継(世代交代も含む)を考え直す、あるいは帰ってこない、新規開業をあきらめるといった状況も想定され、ますます地域医療の崩壊が加速すると思われる。このように医療の現場に大きな混乱をもたらす県別の診療報酬導入は行わないよう求める。

3.医療費が高くなる山口県の特性を考慮した対応をすること

 山口県は全国的にも一人あたり医療費が高く、「素案」では全国4位(2015年度)であるとしている。しかも、一人あたり実績医療費(国保+後期高齢者)では全国2位となっている。これについて、「素案」では、地域差指数(年齢構成による補正)では8位まで下降すると分析しており、山口県において医療費が高くなっている最大の要因は「高齢化」であるといえる。医療費の増加は必然的なものであり、この点を十分考慮した上で、適正化を図ることを求めたい。
 もちろん、不必要な医療費支出は避けるべきであり、「素案」にあるように「多剤・重複投薬の是正」など高齢者に特有な問題に適切に対応することは重要である。ただ、こうした取組みについては、薬局だけではなく主治医との連携が不可欠であり、その視点は盛り込んで頂きたい。

4.健診の効果をあげるために医療の窓口負担を軽減すること

 地域差指数では全国8位になるという点で、高齢化以外にも医療費が高くなる理由があることを「素案」では指摘し、住民の健康の保持の推進に係る施策をあげている。特定健診やそれに伴う特定保健指導の実施率向上は、生活習慣病の予防などの健康づくりによって医療費の適正化を促す目的であり、「第二期」計画に続いて盛り込まれている。「素案」では、国が示した医療費適正化基本方針(2017年1月)に基づいて、「第二期」における目標値(特定健診70%以上、特定保健指導45%以上)を維持するとした。健診や保健指導の推進によって住民の健康を保持していく取り組みは重要であり、積極的に行っていくべきだと考える。
 しかし、その際に問題となるのは、医療機関への受診の際の窓口負担である。重症化のリスク回避や生活習慣病の治療のためには医療機関を受診する必要があるが、高齢者を中心に窓口負担増が進んでいる現状がある。しかも、現行の1~3割負担とは別に「受診時定額負担」を求める動きや市販品類似薬の保険外しなど、更なる負担増も計画されている。これらの経済的負担は、医療機関への受診を躊躇させる何ものでもなく、せっかく健診によって疾病が発見されても受診行動につながらないことになる。健診による疾病予防とともに、疾病の早期発見、早期治療を徹底するためにも、国に対して窓口負担の軽減を求めて頂きたい。あわせて、現行の福祉医療費助成制度を元の無料の制度に戻すことを含め、県としても可能な限り必要な助成制度を検討するべきである。
 また、疾病予防という点では「予防接種の推進」をあげているが、予防接種の適正な実施に向けての啓発だけでなく、接種費用の助成も含めて、接種率の向上に向けた具体的手だてを盛り込むべきである。

5.「医療費適正化計画」は財政主導による強制的な医療費抑制策とならないようにすること

 国は、社会保障改革が「財政健全化」のカギを握るとして、相次いで負担増、給付抑制を進めている。2018年度は、診療報酬・介護報酬の同時改定、国保の広域化、地域医療構想、保健医療計画、介護保険事業計画などの重要な施策の節目の年であることから、これらと連動させて「医療費適正化」を進めていく考えである。
 いずれの施策も都道府県の権限によるところであり、そのガバナンスの強化は国としても重要課題と位置付けている。今回の「医療費適正化計画」が財政対策を優先させた上からの強制的な取組みにならないよう、県としての十分な配慮を求めたい。

 以上