私たちからの訴え

疲弊した歯科業界に必要なのは「歯科医療費の総枠拡大」

 日本経済新聞の6月21日付全国版に、6段抜きで「歯科技工士なり手不足」という大見出しの記事が掲載された。2011年から山口協会が警鐘を鳴らし続けてきた歯科技工問題が、歯科医療の範疇を超えて社会問題化してきた。
 直近の24年間で国民総医療費は約17兆円増加しているが、歯科では口腔状態が全身の健康に関与していることが国民に認知され始め、需要が大幅に増加しているにもかかわらず、この間の歯科医療費の増加は約6千億円に抑え込まれている。国民総医療費に歯科の占める割合は9・8%から6・9%まで下がり続けた。その結果、中医協の医療経済実態調査で公表されたデータでは、歯科医院1ヵ月の収支差額の最頻値が約52万円で、それ以下の歯科医院が実に約4割存在することがわかった。この収支差額の約52万円には、当然のことながら、所得税・市県民税・借入金の元金返済分は含まれていない。その結果、各歯科医院では歯科技工士を雇用することが難しくなり、現在では歯科技工士がいない歯科医院が80数%にのぼっている。これは、患者さんにとっても良いことではない。医療費の抑制を至上命題とし、この問題を放置し続けてきた厚労省の責任は重いと言える。結局、歯科技工は診療所外の歯科技工所へ頼らざるを得なくなってきている。
 2018年4月の歯科診療報酬改定では、院内感染防止対策の実施が初再診料の算定にかかる施設基準として導入され、器具の滅菌等をより厳格に求められている歯科ではあるが、初・再診料の点数は医科の6~8割程しか評価されていない。当然の流れで歯科技工士にもそのしわ寄せの波がやってきて、全国52校の歯科技工学校の内、定員割れをしていないのは4校のみというのが現状だ。定員充足率は全国平均で59%、入学者がゼロという学校も3校ある。
 そのような中、いささかマッチ・ポンプのようではあるが、歯科技工士学校への入学者減に歯止めがかからず、このままでは国民歯科医療に悪影響が出かねないという事態を重く見た厚労省は、保団連の歯科技工問題への取り組みにも影響を受けて、ついに重い腰を上げ、本年5月より、「歯科技工士の養成・確保」に関する有識者検討会を立ち上げて歯科技工士の人材確保策を議論し始めた。この有識者検討会は、人材の養成と確保に向けた対策が主眼だが、構成員の歯科技工士からは、「やりがいだけではなく、労働環境の改善が必要」など、当会のアンケート調査(2013年)で見られた意見と同様の指摘も散見されている。このような現場の実態に即した意見を汲み取ることが何より重要であり、検討会での率直な議論に期待したい。検討会では、議論を取りまとめた報告書を年内にもまとめる方針だという。
 長年にわたり低く抑え続けられてきた歯科医療費の総枠を、現場の声を反映し適切な額に拡大する。そして、歯科医師、歯科技工士の両者がともに成り立つようにし、厚労省が言うように国民歯科医療に悪影響が出ないようにすることは、保団連の進める「保険でよい歯科医療」を実現するためにも、当然必要なことだ。また、保団連としても歯科技工問題を解決するために、次期点数改定に向けた具体的提案を取りまとめることが先日の代議員会で決まった。まさに解決への糸口が見えてきたという状況である。今後の保団連のリーダーシップに期待するとともに、山口協会としても、さらなる前進に協力して行きたいと考える。

(2018年7月20日)