私たちからの訴え

無理が通れば道理が引っ込む

 5月1日を以って令和元年となり新たな時代が始まった。明るく穏やかな時代であるよう念願したいが、超高齢社会の到来を目前にして医療は大きい転換期を迎えており、益々混沌とした状況に陥っていくものと思われる。
 昨年12月「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」が公布・施行され5月1日が休日となったことで、今年のゴールデンウィークは、4月27日~5月6日までの異例の10連休となった(土曜日を診療日とする医療機関は9連休)。ただ、この長期連休については、休日加算の算定をどうするかで令和元年の幕開けを前に、各都道府県で混乱を生ずることとなった。
 厚労省は本年1月15日に「連休における医療提供体制の確保に関する対応について」の通知を発出し、10連休における医療提供体制の確保に万全を期するように各都道府県に求めた。その上で1月30日には、「長期連休における診療報酬等の取扱いについて」との通知が発出され、要は、休日加算の取扱いについては従前通りとするとの内容であったはずである。
 ただ、このあたりから様々な通知の解釈や意見が百出し、きな臭いこととなってきた。インターネット上では、「休日に診療していれば休日加算の算定は当然」との意見や、「国が『患者の治療等に支障をきたすことが無いよう』適切な対応を求めているのであれば、連休中に診療応需体制をとる一般医療機関においても、休日加算を算定できるようにすべき」との要求が出始めた。保団連も然りである。
 しかし、休日加算とはそうしたものではなく、診療報酬上で厳に規定されたものである。つまりは、客観的に休日における救急医療の確保のために診療を行っていると認められる医療機関(地域支援病院や省令に定める救急病院等、また、「救急医療対策の整備事業について(通知)」に規定、或いは、その一環と位置付けられた医療機関)を受診した患者について算定が可能で、それ以外で休日を診療日としても休日加算の算定は不可とされている。
 ところが、一部の県では医療機関の判断で連休中に診療を行う場合、県からのアンケート調査に回答し、連休中の診療予定が県のホームページに掲載されれば「休日加算の算定は可能」とした。県によっては「……該当する医療機関は、病院群輪番制病院や在宅当番医以外の一般医療機関でも休日加算が算定可能……」、「……算定するかどうかは医療機関自らの判断で対応頂く……」という文書も流されている。自院患者の利便性の為に通常通りの診療を行う予定の医療機関でも、ホームページに掲載されれば同じ扱いとなる。
 この結果、都道府県によっては、連休中に診療を行った医療機関の診療報酬請求に大きい格差が生じることとなった。また、不可分であるはずの初・再診料に、初診料には休日加算がついて、再診はそのままであったり、場合によっては再診料にまで休日加算の請求が起きかねない事態が招来された。
 診療報酬点数とは全国で統一的な取り扱いが為されるべきであり、請求点数の一定の割合となる自己負担分も、当然、全国的に統一的なものでなければならない。それを許せば一物二価、三価となり、究極的には都道府県別の診療報酬を容認することにも繋がりかねない。また今後、長期の連休がある度に同様な議論が起こらないとも限らず、何れにせよ前例を残したことに相違無い。
 この事態は、連休中に診療を行う医療機関等からの、通知の様々な解釈や意見を基にした医師会をはじめ種々の医療団体の圧力と、異例の長期連休で、医療提供体制の確保を不安視する行政の、ポピュリズムとも言える妥協により引き起こされたものと考える。自らの意思で休日に常態として診療を行う医療機関を、在宅当番医と同等なものして取扱うことは、どう見ても規則から逸脱した無理筋と言え、謂わば「無理が通って道理が引っ込んだ」も同然である。これが、今後にどのような影響を残すのかは注意が必要であろう。

(2019年6月5日)