私たちからの訴え

歯科技工問題の解決に向けて

 高齢化が進行する中、国民歯科医療に大きな影響を及ぼす歯科技工問題に対して、厚労省は、昨年4月の診療報酬改定で、解決に向けて22項目の補綴関連の点数を引き上げた、としたが、現在に至っても歯科技工問題の危機的状況は収まらない。今年の4月の時点で、全国の歯科技工士養成学校の内、募集定員を満たしていたのは52校中わずか6校のみであった。学校の継続が厳しくなるといわれる定員充足率6割未満の学校も、実に31校にも及んでいる。そのうち入学者0人は5校。また、卒業後、せっかく国家試験に合格しても5年以内の離職率が7割前後と、若い世代の離職が相次いでいる。今年の8月には石川県で県下唯一の歯科技工士養成学校が、2021年度末で閉科することが発表され、ここ数年、歯科技工士養成機関のない県が目立ち始めてきた。
 歯科技工士は歯科医師の指示に従って、義歯や被せ物、詰め物の製作・加工を行い、口腔内の咬合機能、咀嚼機能の回復にとって重要な役割を担っている。この補綴関連は歯科診療報酬の約37%を占め、高齢社会が進行する中、歯科技工士の役割は一層高まるという認識を厚労省は持っている。歯科技工士の窮状に対しては、人材確保、処遇改善も含めて「検討会」で議論しており、現状を改善するために秋には議論の取りまとめが行われる予定である。
 歯科技工問題は、技工料金の原資となる診療報酬の問題が大きな部分を占めている。技工物の製作に対する保険点数は、大臣告示により、製作する歯科技工士が概ね7割、製作内容を指示し制作された技工物を受け取り、管理する歯科医師が、管理料として概ね3割で分配するとされている。しかし、現状では大臣告示に基づく7割を歯科技工士に支払うと、歯科医療機関の経営が成り立たなくなる。「7:3」と告示しながら、両者が成り立つような技術料の適正評価や、取引ルールの整備を怠ってきた厚労省の責任は大きい。当会は、歯科技工問題を単なる歯科技工士の問題ではなく、低歯科診療報酬に起因する歯科界全体の問題として捉えている。従って、診療報酬の総枠を拡大し「7:3」の7の部分を支払っても、歯科医師が十分成り立つように、歯科医師の技術料を見直すことで「7:3」告示が実現できるよう求める(この要求は「7:3」の固定化を求めているものではなく、当面の基準として現に示されている「7:3」に準じた技工料金の実現を目指すものである)。そしてその適正な配分は、原価計算をもとに、常に検証されなければならないという、保団連の主張を支持している。
 当会では先日、この問題に関する記者会見を実施した。医師・歯科医師に対して厳しい意見を言うこともあるマスコミ関係者も、歯科技工問題の資料を示して順を追って説明すると、このままでは歯科技工士不足になり、安定した歯科技工物の提供が、患者に対してできなくなるということに理解を示し、また、そうならないためには両者が成り立つ歯科診療報酬の総枠拡大が必要だということに対しても、一定の理解を示してくれた。整理して記事にしたいからと、下関の歯科技工学校に取材に行ってくれた記者もいた。
 マスコミは一定の理解を示してくれているが、厚労省は解決のための診療報酬総枠拡大については、ブレーキをかけ、予算の出し惜しみにより、わずかな引き上げに止めている。これが問題解決への道を遠くしている。ただし、厚労省も、中々解決できない歯科技工問題に頭を悩ませており、現場の声を聴くことは有意義だというスタンスから、定期的に懇談に応じている。
 当会では記者会見を皮切りに、同様に記者会見を行うよう全国の協会へ呼び掛けている。すでに、いくつかの協会から問い合わせがあり、資料を送付するなどしたところもある。今後も厚労省、国会議員、歯科医師会、マスコミ、そして世論に対して、解決に向けての総枠拡大の必要性を、保団連と協力して訴えていき、最終的には厚労省に決断を迫りたい。

(2019年11月)