私たちからの訴え

概算要求に見る社会保障費と防衛費 「無駄」とは何か

 8月31日、2019年度予算編成に向けての各省庁の概算要求が出そろった。マスコミ各紙は「過去最大の102兆円を超える(102兆円台後半)」との見通しを発表している。予算の議論の中では毎回のように社会保障費の伸びが取りざたされるが、今回も高齢化による自然増を含め当初比6000億円増の32兆円を超えるとも言われている。同じ日に国立社会保障・人口問題研究所では、2016年度に年金、医療、介護などに充てられた社会保障給付費を発表し、前年度比1・3%増の116兆円超で、高齢化を背景に右肩上がりを続ける給付費は、過去最高を更新したとしている。社会保障費は財政健全化のターゲットとされているだけに、またもや予算決定にあたって削減に向けた財務省からの圧力が危惧されるところである。
 政府は、経済財政運営の基本方針である「骨太の方針」を閣議決定し、これまで2016~2018年度を「集中改革期間」と位置付けて、各年度の社会保障費の自然増を5000億円以内に抑えてきた。その上で今年6月の「骨太の方針2018」では、団塊の世代が75歳以上となる2025年のPB黒字化に向けて、社会保障費の急増が見込まれる(2022年から団塊の世代が75歳に入り始める)前の2019~2021年度を「基盤強化期間」として、経済成長と財政を持続可能にするための基盤固めを行うとした。社会保障関係費の実質的な増加を高齢化による増加相当分の伸びに抑えることは既定路線であり、今回は明確な数値目標こそ示してはいないが、概算要求で示された6000億円に対して、一層の患者負担増、給付の抑制を求めてくることは明らかだ。
 社会保障費は、医療や介護、そして将来の生活を保障する年金にあてられるものであり、憲法に規定された国民の生存権を保障する上で必要な財源として、確保されるべきであることは言うまでもない。したがって、国家予算の多くを占めるのは当然のことであるが、それだけに「経済財政再建」を掲げる政府にとって削減のターゲットなっている。消費税率引き上げによる税収増と社会保障費の圧縮が、「税と社会保障の一体改革」と称して進められているのはそのためだ。政府は「社会保障には無駄がある」ことを盛んに喧伝するが、国民の生存権を保障する費用における「無駄」とは何なのだろうか。これまでの「骨太の方針」では自然増の伸びを5000億円以下に抑えること掲げたが、数字ありきの社会保障制度改革の中で、「無駄」と称するものは明確ではない。
 来年度概算要求において、社会保障費と同様に「過去最高」と言われているものに防衛費がある。今年度当初予算比で7・2%増の5・3兆円を要求しているが、私たちからすれば、ここにこそ「無駄」があるのではないかと言わざるを得ない。防衛費は、安倍内閣発足以降7年連続して前年度予算を上回っており、最新といわれる防衛装備を次々と配備する現状は、社会保障費を防衛費に回しているように思える。山口県で話題となっている「イージス・アショア」(陸上配備型の弾道ミサイル迎撃システム)配備には、秋田県とあわせて2基を導入するために2400億円が計上されている。維持費などを含めたミサイル防衛関連経費は、4200億円を超えており、2018年度予算に見込んだ社会保障費の削減額1300億円を補って余りある額である。東アジア情勢の変化を考えれば、本当に必要な防衛装備なのか、疑問はふくらむばかりだ。防衛費の必要性を否定するつもりはないが、国際平和をめざすのであれば、武器の調達を競うのではなく、外交による話し合いの手段を探ってこそ、平和憲法を掲げる日本の行く道ではないかと思う。
 政府は2016年度から3年間、社会保障費の自然増を5000億円以内に抑えてきたと強調しているが、社会保障費には無駄があると見て、高齢化による自然増を圧縮することを誇るような政策を是とする判断は、大いに問題だと言わざるを得ない。消費税増税の一方で社会保障費が削減される現実を国民はどう見ているのか、国家予算のあり方が問われているのではないだろうか。

(2018年9月5日)