私たちからの訴え

指導は医療機関の「取締り」の場ではない

 8月は終戦記念日の月であるが、医科の個別指導が始まる月でもある。保険医協会は会員を守るために、個別指導に対しては最大限の努力を行い、多くの成果を上げてきたが、現状を確認するとともに、今後の課題を上げてみる。
 指導には、「集団指導」「集団的個別指導」「個別指導」の3種類がある。集団的個別指導は「高点数」のみを理由に選定されるもので、抗がん剤を使えば高点数になるのは当たり前で、高点数だけを理由に指導することは不合理であり、協会としては「集団的個別指導」は廃止すべきと主張している。また、個別指導には新規指定の医療機関を対象とした「新規個別指導」があるが、措置は行わず、指導項目の通知にとどめ、より教育的観点で実施するよう要望している。問題となるのは個別指導であり、個別指導の選定基準をすべて挙げると、①支払基金・国保連合会・保険者等からの情報があり、地方厚生局等が必要と認めたもの、②個別指導結果で「再指導」または、「経過観察」であって、未改善のものは再指導、③監査結果で「戒告」または「注意」のものは再指導、④(医療法上の)立入検査で「問題」があったもの、⑤集団的個別指導の指導対象レセプトの大部分が適性を欠くもの、⑥正当な理由なく「集団的個別指導」を拒否したもの、⑦検察または警察からの情報があり必要を認めたもの、⑧他の医療機関の指導・監査に関連して必要と認めたもの、⑨会計検査院の実施検査の結果により必要と認めたもの、⑩一件当たりの点数が高い医療機関(集団的個別指導からの移行分)、である。
 これらをまとめると、①はいわゆるタレ込み(情報提供)で、一般的には審査機関(特に国保連合会)や患者からの情報によるものであり、注意が必要である。②③は再指導、④⑦⑨は行政からの情報、⑧は他医療機関の指導・監査に関する反面調査的なもの、⑤⑥は集団的個別指導の結果などによるもので(ただし、現時点では⑤による選定はない)、⑩は高点数を理由にした指導である。
 詐欺や不法行為に当たる「不正請求」に対しては、指定取り消しや返還が求められるのは仕方がないかもしれないが、カルテ記載が無く請求根拠が不十分だとする「不当請求」に対しては、丁寧な指導が必要と考える。しかし、現状は監査的個別指導ともいえる状況で、指導が監査と連動し、請求内容が適切かどうかを暴く場となり、「不当請求」であっても自主返還が求められている。平成27年度の指導による自主返還金額は45億円を超えている。
 保険診療を円滑に行い、充実した医療を提供するためには、行政は正しい知識を普及する義務があり、保険医療機関には正しい知識を知る権利がある。「指導」は元来、その具体的な実現の場であるべきで、検査、監査、取締りの場となるのはおかしいはずだ。
昨年度から、指導実施の通知は1ヵ月前に、対象レセプトは1週間前に20人分、前日に10人分が通知されるようになり、保険医協会の要求による改善もあった。しかし、まだまだ十分な改善とは言えず、病院の場合、実際上は主治医の出席が必要となるため、前日通知ではすべての医師が出席を求められる可能性があり、指導当日はまったく業務が組めないという問題もある。
 保険医協会では、個別指導に対する「対応と心得」について学習会を開催しており、弁護士帯同を希望される場合も対応を行っている。個別指導の「実施通知」が届いたら、まず保険医協会にご一報頂きたい。

(2017年8月20日)