私たちからの訴え

地域のニーズに応える有床診療所 なぜ医療費抑制の標的とするのか

 平成に入ってから医療費の高騰を抑えるために、国は2つの愚策を打ち出しました。医師数削減と、病床数の削減です。
 1つ目の愚策の医師数削減は、医師数が増えれば、受診機会が増え、医療費が増大するという安易な発想です。1997年に医師数削減、医学部の統廃合を閣議決定しました。医師不足により、国民生活に多大な悪影響をきたすようになりました。2008年の福田内閣では、医学部定員を増加させ、東北医科薬科大学と、国際医療福祉大学を設立しました。閣議決定までして、10年での政策転換のこの責任はどうなるのでしょうか。政策的に完全に大失敗です。
 2つ目の愚策の病床数削減は、現在も続いています。病床が存在すれば、稼働率をあげようとして無理に患者を入院させ、医療費を増大させるというロジックです。平成は特に、国は有床診療所をターゲットにしました。
 有床診療所とは、医療法上、医師1人で19人以下の患者を入院収容させる施設です。平成のはじめには、有床診療所は2万3589施設あり、病床数は約27万2000床ありました。厚生労働省が、2018年9月21日に公表した「医療施設動態調査」では、2018年6月時点の有床診療所数は7043施設で、病床数は9万6134床となりました。この原稿が出る頃には、有床診療所数は間違いなく7000施設を割り込んでいます。平成のはじめの頃の30%に減りました。
 有床診療所は、ターミナルの患者や廃用症候群の超高齢者を多く診ています。有床診療所は地域の医療ニーズに合致した医療を提供し、病院と比べて大変安価です。国は医療から、介護へと旗を振り、有床診療所の保険点数を引き下げました。狙い通り病床閉鎖する施設が増えました。
 有床診療所が閉鎖する施設が増えるにつれて、基幹病院の救急が増えるようになりました。統計ではなかなか出てきません。それは医療法が長い間、「有床診療所は同一の患者を、48時間を超えて入院させることのないように努めなければならない」という規制が存在していたためですが、2007年(平成19年)にようやく医療法が改正され、長年の48時間制限は撤廃されました。有床診療所は48時間規制があったので、統計には出てこなかった日陰の存在でしたが、地味に良い仕事をしていました。
 現在、有床診療所の廃止理由は、主に3つあります。1つ目は、看護職員の雇用が困難です。特に夜勤の看護職の確保が困難です。次いで、長年にわたり有床診療所を頑張ってきた先生が高齢となり、以前のような勤務負担ができにくくなりました。3つ目が、建物設備・医療機器を更新しなくてはいけませんが、現在思うように投資ができないことです。建物については、旧耐震基準の建物も多くあります。近年入院施設については、高い耐震基準を求められるようになりました。建て替えしようにも、建築費が高騰している現状では、採算が取れるかわからない施設への大型投資、銀行融資を取り付けることは難しいです。
 国は医療から、介護へと旗を振っています。医療資源が乏しい多くの介護施設が、医療機関の代わりとなるのは難しいと思います。介護施設の中には、異業種からの進出が多くあります。建設業界などです。インフルエンザの感染1つをとっても、インフルエンザ検査、陽性の場合の抗インフルエンザ薬投与などが、異業種の介護施設では難しいこともあります。医療機関との連携がうまくできず、感染を拡大させることもあります。国は介護施設を作らせるように政策誘導していますが、介護費と医療費がかかり、かえって多くの社会保障費がかかるようになっています。コストパフォーマンスの良い有床診療所を、なんとか残せないのでしょうか。平成の終りに思います。

(2018年12月5日)