私たちからの訴え

働き方改革関連法案の行方

 国会に提出された「働き方改革関連法案」は、厚生労働省の不適切データ処理の問題があり、森友問題に始まった情報管理関連の官僚の不祥事に対し野党が内閣を厳しく追及する構えで、その行方については現状では不透明である。しかし、成立した際には医療界にも少なからず影響が出てくるので少し考えてみたい。
 働き方改革関連法案の柱は、①残業時間の上限規制、②同一労働同一賃金の導入、③高度プロフェッショナル制度の創設、④裁量労働制の拡大(これについては、不適切データ処理の問題を受け、削除された)などである。まず、すぐにでも影響を受けるのは②同一労働同一賃金である。多くの診療所は従業員をパートタイムで雇用している。その労働条件を正社員を比較して契約し直さなければならないケースが出てくる。フルタイムで働きたくない人もいるだろうし、条件が変わることで経費の増加も懸念される。
 われわれ医師については労基法改正案で①の残業時間の上限規制が導入されるとどうであろう。事実上青天井なのが年間720時間以内となる。法案どおり成立すると施行は19年4月。医師は5年の猶予期間があるが、24年以降適用される。厚労省によると病院勤務医の時間外労働は年850時間であるとしている。あるアンケートによると勤務医の35%の3人に1人、開業医の19・3%の4人に1人が上限を超える。
 残業時間の削減については現状から解決方法を見いだすのはなかなか難しい。病院で入院患者を主治医として担当すれば365日24時間、いつ呼び出されるかわからない。複数の医師で担当するチーム制も人手不足、主治医制を重んじる風潮になじまないため勤務医の労働時間を減らすことは困難である。働き方が変えられないなら、せめてそれに応じた対価が手当てされているか? 労基署から時間外手当未払いの支払い命令が病院に発出されたという事件が少しずつ増えている。医師も労働者であることは裁判の判例からも明白であり、労働契約をしっかり結ぶことを意識するのが大事なのはいうまでもない。しかし、自身を振り返ると、病院の人事は大学医局の派遣であったりして業務の内容や時間など詳しい内容で契約を結んだことは一度も無い。
 しかし、開業して雇用する側になると、事細かな就業規則を作り契約書を従業員と交わすようにしている。医師も勤務するなら未払賃金が発生しないよう労働契約を交わす努力が必要だと考える。今回の高プロ契約は診療を仕事とする医師にはそぐわないし、問題となった裁量労働制は医師については法令で除外されている。
 また、手当てする病院側もそれを受け入れる経営的な体力をつける必要がある。診療報酬が改定されたばかりだが、本体プラス改定とされたといえど、まだまだ不十分である。内容も協会の訴える初・再診料の引き上げではなく、加算による部分が多い。その算定要件を満たす様々なハードルが医療機関側の負担になり、かえって就労の時短を妨げてしまう。医師だけでは解決はとても困難であり他職種の力も借りる必要があろう。インフォームドコンセントも定型的なものは看護職に任せる、診断書や計画書の作成はクラークを活用する、などである。
 最後に、勤務医が自ら働き方を改革するもうひとつの方法が開業である。開業すると働く時間が短くなるとは限らないが、自由度は比較にならない。しかし、いま医師の偏在を是正するという名目で改正医師法、医療法が国会に提出されている。改正法案は外来医療機能の提供体制の確保に関する事項が盛り込んであり、地域医療構想による病床規制、医療機能の縮小の延長上に開業規制に繋がる危惧がある。医師の偏在解消を理由に保険医の配置・定数の設定や自由開業の見直しを盛り込まれたりしないように、法案の行方を注視する必要がある。