私たちからの訴え

「医療ツーリズム」自体を問題視すべき

 2018年4月の診療報酬改定、先生方はいかがであっただろうか。当院では数ある施設基準の内、「歯初診」しか算定できなかった。
 さて、話は変わるが、昨年5月、ある週刊誌の「日本の医療費が中国人に食い物にされている」との見出しが目についた。
 その内容は、「中国人富裕層などを中心とした外国人が来日し健診を受け、いざ病気が見つかると、医療滞在ビザ以外のビザを取得して公的保険制度に加入し、保険治療を受けたり、あるいは本国にいる家族を扶養に入れることで治療を受けたりしている。中にはオプジーボなど高価な薬を使用する治療を高額療養費制度を利用して受けるケースもあり、外国人のために日本の医療費が費やされてしまっている」というものである。記事は3週にわたり特集されており、他の紙面では、「外国人が国民健康保険に加入して半年以内に80万以上の高額治療を受けたケースが年間約1600件あった」との記述もあった。
 本当にこのようなことが行われているとすれば、是正が必要な問題ではある。政府もこの問題に対応するために、健康保険を使える扶養親族は原則として国内居住者に限ることなどを盛り込んだ健康保険法の改正を検討しているところである。
 しかし、問題の本質は、外国人に日本の医療費が費やされているという所にあるのだろうか。
 ここで問題視されているのは、外国人が医療費を使う公的保険制度をフリーライド的に利用している点であるが、日本の医療を外国人富裕層に向けて自由診療で提供すること、つまり日本へのインバウンドの獲得を目指す「医療ツーリズム」は、「成長産業としての医療」という観点から経済産業省の主導のもとで推進されてきたものである。2011年には、「医療滞在ビザ」が解禁され、最長6ヵ月の滞在が可能、かつ3年以内なら何度でも入国可能となり、日本へ医療を受けに来るハードルが大きく下げられた。以来ビザの取得数は右肩上がりとなっており、今や、外国人利用の自由診療病院が開設されることまで検討されている。少子高齢化が進み医療資源が限られる中、外国人が自由診療で高額な医療費を支払うケースが常態化すれば、保険診療の日本人患者が後回しにされかねないという問題もある。週刊誌の論調は、「日本の医療費を使っている外国人を摘発すべき」ということに重点が置かれていたが、医療を外国人富裕層にむけた「産業」として推進する「医療ツーリズム」そのものを問題視すべきである。
 そもそも、日本の医療は憲法の保障する生存権を具体化した「社会保障」であり、医療は国民のために有るべきものである。「医師法」の第一条にも、『医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする』と記され、対象者が「国民」と指定されていることからも明らかだ。格差と貧困が広がる日本には、重い病気を抱えていても経済的な負担から医療にかかることができない人、必要な医療を受けることのできない人が大勢いる。外国人の公的保険制度の不正利用も確かに問題ではあるが、それと同時に、医療を受けられない日本人を救う手だてを政府も役人も考えて行く必要があるのではないか。

(2019年3月5日)