私たちからの訴え

「医師の品格」とは何なのか

 14年前ほどのこと。『国家の品格』がベストセラーとなり、次々と「品格」が題名に入った本が出版された。『女性の品格』をはじめ、『男の品格』『親の品格』『横綱の品格』『ハケンの品格』などの言葉もある。そして医療界では『病院の品格』『医者の品格 医者の欲望』等が出版されている。
 なぜ「品格」という言葉が流行り、「品格本」を求めたのか。たまたま『国家の品格』が流行り、流行語大賞まで受賞してしまったことも一因かもしれないが、なんとなく日本の行く末を案じ「品格」という言葉に救いを求めたのではないかとも感じていた。最近でこそあまり聞くことが無くなった「品格」という言葉だが、医療人には常に求められている。
 『病院の品格』では「国策によって病院崩壊という危機的状況に直面する我が国の医療提供体制において、国民が医療に対する信頼を失っていく状況下でも患者に絶大な信頼を得る病院こそが品格を持った病院」と述べられている。しかし、これは、品格という言葉が意味するものではなく、ただの格付けのようにしか感じなかった。
 一方、『医者の品格 医者の欲望』では「このままでは日本の医療は確実に崩壊する。それは国民の生命の危機を意味する。根本的な原因は医者の減少ではなく、医者としてのモラルや品位の喪失である」と立派なことを主張されているのだが、医療崩壊を医師だけのせいにされたのではたまらない。ほとんどの医師は、過酷な環境の中で身を削って頑張って働いている。
 だが、医師・歯科医師は、患者さん、スタッフ、同僚、部下や上司、組織の仲間、その他周囲の人々に対しての言動など様々な場面で「品格」を求められている。
 「子どもが腕を脱臼したため病院に行くと腕をつかんであれこれして、『治った』と言われ帰されたが、帰宅しても痛がるので病院に電話をしたところ、『自分がどう診察しても泣くだけだと思うから来なくていい』と言われたので、仕方なくほかの診療所を受診して治してもらった」と書かれた文章をインターネット上で見つけた。その父親は、病院の医師に罵声を浴びせるわけでもなく、ブログに書いてしまった。「ブログに書くことでその病院に何らかの影響が及ぶ可能性があることは承知の上である」「対応した医師はそのことを理解しているのだろうか」とも書かれている。しかもブログの見出しは「医師の品格」。
 もう一つ、研修医のブログ。その文章のタイトルは「上級医の品格」。「指導医が研修医を叱るのは研修医のことを思ってのことで当然であると考えるが、上級医(指導医)同士のやり取り(同僚批判)はとても気になる」と書かれている。もちろんここにも品格という言葉が出てくる。
 キューバの医師チェ・ゲバラの「ただ一人の人間の命は、この地球上で一番豊かな人間の全財産よりも100万倍の価値がある。隣人のために尽くす誇りは、高い所得を得るよりもはるかに大切だ」という言葉に、キューバという国の品格を感じたという方もいるかもしれない。
 「医師の品格」とは言葉で表せるものではない。しかし、保険医協会では、会員や組織にそぐわない、品位のない要求や主張をしてはいないかということまで検討する。医療人として、また人として、品格を失わないよう、常に考えて活動をしていきたい。

(2019年4月5日)